幼い頃、私はよく夢を見た。
将来の夢という意味での【夢】と寝る時にみる【夢】どちらの意味の夢。
私は夢見る少女というのがピッタリと当てハマっていたと思う。
その夢はポケモンと一緒に旅をすること。
現実じゃあり得ないけど、将来、私が大きくなったら遺伝子研究とかでポケモンを作り出して旅をするんだ、ってそんな本当に夢みたいなことを思ったりした。
でも、それはその時は叶わなかった。
だって殺されたから。
悔しくて、苦しくて、痛くて、
恨みだけが【わたし】の生きる意味になった。
でも、わたしの目の前にはずっと夢見てたポケモンがいて、わたしの知ってる町があって、
わたしの心は【私】を思い出してワクワクしてる。
『あ、あの、わたしだけでマダツボミの塔に行ってきてもいいかな?わたし、一人で行ってみたいの。』
「………」
わたしの言葉にヒビキくんは無言でわたしを見る。
それに言葉が詰まりそうになりつつもわたしは二人の瞳を逸らさずに見た。
「……私はいいと思うわ!ナマエちゃんがやりたいってことなら反対しないってことね!それに…私たちのところに帰ってくるでしょう?」
そうわたしに聞くコトネちゃんの瞳には不安のような確信のようなものが揺らいでいて、わたしは思わずこくりと頷いてしまった。
「そう、ですね。分かりました。では、終わったらポケモンセンターに来てくださいね。夕方までは僕たちもナマエさんを待ってますから。」
『あ、ありがとう!』
わたしは二人に笑顔でお礼を言うと、モンスターボールからシオンを出してマダツボミの塔に向かった。
わたしは確かに恨みだけで生きてる。
でも、それと同時にわたしは【私】の夢でもある。
だから、わたしはこの矛盾した気持ちを持って生きてくしかないの。
『シオン…』
「ーー?」
『わたしのすることを否定しないでくれる?わたしは最低なことをするかもしれない。ううん。きっとする。その時に、シオンたちを巻き込むかもしれないけど、わたしと一緒にいて……?』
わたしは不安で不安で、
最低なことをシオンに言ってる。
ちゃんと気づいてる。
シオンたちに拒否権はないのに。
「ーーー!」
『っ、ごめんね、ごめんね、シオン。』
肯定するようにこくこくと必死で頷くシオンを見て、またわたしはボロボロと涙を零す。
レッドとグリーンはもういない。
だってわたしが巻き込みたくなかったから。
誰も慰めてくれる人はいない。
『シオンシオン。ごめんね、ごめんね。……ありがとう…』
「ーー、」
でも、わたしはきっとこの子たちがいればなんだって出来る。
わたしは涙でぐちゃぐちゃな顔を笑顔をシオンに向けながらマダツボミの塔へ力強く一歩踏み出した。
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bkm