『ぐすっ……で、貴方は結局どうしたいんですか?』
《ぼ、くは、ごしゅじんといっしょにいたいんだよー…》
落ち着いてくると私は狛犬くんに話しかける。
すると、狛犬くんは私の手にぐしぐしと頭をこすりつけながらそう答えた。
『それは、朱雀様が貴方に言ったからなんですよね?じゃぁ、それは貴方の意思じゃないです、朱雀様の意思になっちゃいます。』
《ちがうよ!すざくさまたちは、もともとぼくとごしゅじんがにてたから、ぼくをごしゅじんのところにこさせてたんだよ…!》
『?よく、意味がわからないです』
私と狛犬くんが似てる?
どういうことでしょう?私は狛犬くんよりしっかりしてます。
《あのね、ぼくね、あたまいいの。ゆうしゅうなの。》
『……自慢ですか?』
《ちがうもん!…ぼくね、ふたごのおとうとがいるの。》
それは何処かで聞いたことのある話。
おとうとはね、ととさまからも、かかさまからも、あいされてるんだ。
ぼくよりあたまよくないのに!
ぼくもととさまからも、かかさまからも、あいされてるとおもう。
でもね、やっぱりおとうとにはかてないんだ。
それにね、みーんなぼくのこときもちわるいっていうんだ。
ぼくがあたまいいのはいじょうなんだって。
ぼくかなしかった。
そこまで聞いて私は朱雀がこの子と私が似ていると言っていた理由に納得する。
形は違うけど、この子も私と同じ思いをしてきた子。私より幼い子なのに。
《そしたらね!すざくさまたちがあらわれて、ごしゅじんならぼくといっしょにいてくれるって、ぼくをいちばんにあいしてくれるって!だから、ぼくはここにきたんだよ。だから、だから、いらない、なんていわないで…》
狛犬くんはそう言い切るとボロボロと涙を零す。
それが私の小さい頃にとてもよく似ていて、
『……、わかり、ました。』
《ごしゅじん、ぼく、ぼく、ぼくね、ほんとはくるしかったんだよ。みんな、ぼくにきたいするんだ。ねぇ、ごしゅじんはちゃんとぼくをみててくれる?ぼくじしんをみててくれる?》
『泣かないで、私も狛犬くんと同じです。苦しいですよね。辛いですよね。みんな、私なんて見てないんです。私の周りにあるものばかりを見てるんです。』
狛犬くんをぎゅっと抱きしめながら、そう囁くように呟く。
そう。知っていた。
私と仲良くなりたいのは私が頭がいいから。
私自身なんて一つも見ていないのです。
私と、この子は同じ。
きっと分かりあえる。
悔しいけど、朱雀にちょっとだけ感謝した。
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bkm