私はキョロキョロと辺りを見渡す。
さっきの男もいない。
それにさっきとは全然違う場所。
「久しいな、名前。」
『っ、だ、誰…?』
いきなり声が聞こえてきた。
周りを見渡しても人の姿はない。
「ああ、そういえば記憶がなかったのだったな。」
『な、んで貴方が、』
「我は朱雀星君。そなたと会うのは二度目だ。」
目の前がチカチカする。
なんで、そんなことしか考えられない。
「頭の処理が追いついていないのか?そなたのそのピアスは我が授けたものだ。」
朱雀はそう言って私に触れようとした。
私はそれにぞくりと肩を震わせる。
『い…っや!私に触らないでください!私は、私は神様なんて嫌いなんです!』
私の記憶を残したのは神様。
私が苦しい思いをしてるのも神様のせいでしょう?
だから、私は神様なんて大っ嫌いなんです。
「………我を拒絶するか。」
『ひっ、』
そう言って私を見る朱雀は声は低く、目は私を見ていなかった。
「そなたが我を拒絶するなんてあってはならない。我と名前は一つ。そう一つになるなのだ。」
『わ、私は巫女じゃないです、』
「はは、誰が巫女だけと我が交わるなど決めたのだ。他でもない人間だろう?我らはそう決めたことなど一度もない。」
この人は誰?
私の知ってる朱雀とは違う。
「我がそなたの記憶とは違うので驚いているのか?」
『、なんで』
なんでこの人はそのことを知ってるの?
「名前のことならなんでも知っている。」
『っーーー!』
わからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからない
なんで朱雀が私をこんなに求めるのか。
なんで朱雀が私のことを知っているのか。
「そなたは我のものだ。そなたが我を拒絶するというのなら我はそなたを籠に入れなくてはならぬ。」
『ぃや…』
「それが嫌だというのならそなたは我を受け入れよ。我を受け入れ我と一緒になるのだ。」
朱雀はそう言いながら私の頬を滑らかなその手で撫でる。
私はそれが嫌なのに恐怖からか拒絶なんてできなかった。
「まあよい。まだ時間はたっぷりある。そなたが我のものになるのはそなたが【死】を受け入れたとき。その時、そなたは我と一緒になるのだ。」
『っ、』
「ああ、忘れていた。そなたが持つピアスは我の力が込められたもの。失くすではない。そして、後からそなたを護るため我が使役するものを呼んでおく。そなたは我のものだ。忘れるでない。」
朱雀は最後、私に触れるだけのキスをするとどこかに行ってしまった。
私は体から力が抜けたようにその場に座りこむとそのまま意識がなくなってしまった。
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bkm