「今日の授業はここまで!」
がやがやがや、
すべての授業が終わったとたんに騒がしくなる教室。
今日どっか行かなーい?
あ、私ワック行きたーい!
いいね!行こうー!
そんな会話が聞こえてくる横で私は一人黙々と帰りの支度をする。
そんな中で一人の女の子が私に話しかけてきた。
「ね!夕城さんも一緒に行かない?」
『………ごめんなさい。私、今日は用事がありますから。』
にっこり、
私は笑顔で女の子の誘いを断る。
「そっかぁ…じゃぁ、今度遊ぼうね!」
『はい。機会がありましたらお願いします。』
「うん!バイバイ!」
『さようならです、』
あぁ、くだらないです。
私はそんなことを考えながら素早く教室から出る。
「ちょっとー、夕城さんが一緒に来るわけないじゃん」
「だよねー。でも、仲良くなったら宿題とか楽になりそうで良くない?」
「あはは!それ言えるー。あーあ、夕城さんもお姉ちゃんくらい明るかったよかったのにねー」
「だよねー」
私はそんな会話を耳にしながら泣きそうになる自分を隠してさっさと家に帰った。
*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*
『ただいまです、』
「おかえりー。」
そう言って私を出迎えてくれるのはお兄ちゃん。
私はお兄ちゃんの姿を見つけると同時にお兄ちゃんにぎゅっと抱きつく。
「?なんかあったのかー?」
『……お兄ちゃんも、私が美朱ちゃんくらい明るかったらいいと思うですか?』
私が唯一甘えられるのはお兄ちゃんだけ。
私を特別だと思わないで美朱ちゃんと同じように接してくれる。
「そんなわけないだろ。名前は自分を大切にすればいいんだ。」
『ん…』
「ったく…」
お兄ちゃん、お兄ちゃんは私の特別。
何一つなくていいって思った私の心を見つけてくれた。大切な人。
『お兄ちゃん、』
「なんだ?」
『私、お兄ちゃんいてよかったです。』
その言葉にお兄ちゃんは黙って私の頭を撫でてくれた。
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bkm