鳥は空を飛ぶ 15


私とぽちが布に描いた、だまりんちょぱぱりんちょぽっぴきぴーちょを帆にした船に乗ってしばらくすると、たくさんの霧が出てきて前が見えなくなった。


「霧が出てきたのォ。一寸先もなんも見えへんで。」
「キリでキリキリまいっ」
『ぽち、それおまじない?』


不思議な言葉を言ってるぽちに首を傾げつつ、私はぽちをぎゅーっと抱きしめる。
ぽちはねー、モコモコでフワフワで気持ちいいの!
私がぽちと遊んでる横でうーちゃんとこーちゃんは話を続ける。


「こんな所に島があるんか?」
「こんな所だからこそだ。深い霧と崖に覆われ、鳥すら通わぬ絶海の孤島。見届け物すら届かない見捨てられた島。それが偽り人の流刑地、撫子島。」


目の前には大きな島。
それを見て私はゴクリと唾を飲んだのであった。


「ここにいるのは凶悪な嘘つきだ!気ぃ抜くんじゃねーぞ!」
『うーちゃん!うーちゃん!』
「リンゴはお弁当に入りますかー?」
「眺めのエエとこで食べよなー。」
「(だるっだるだなオメーら。)」


私とぽちがうーちゃんに話しかけてた横でこーちゃんが頭の中で突っ込んでいたことは知らない。


*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*


そんなこんなでうーちゃんが騙された。


『う、うーちゃん?』
「………空?」


初めて騙されたうーちゃんの顔は長年一緒にいて初めて見るものでした。まる。




今から数時間前、撫子島に着いた私たちは早速騙されてお弁当とこーちゃんの薬箱を奪われた。

それをうーちゃんが取り返しに行くと、私たちからモノを盗んだ人たちの流人頭の女の人がうーちゃんを引き止めたらしい。
で、うーちゃんはその女の人に騙されたらしいのー。

そんな騙されたうーちゃんは今、私たちの目の前で呆然としています。


「オイ、あんま思いつめんなよ。長い人生、一度や二度騙されることだってあるからな。」
「………騙された?」


こーちゃんがうーちゃんを慰めようと言葉をかける。
すると、今まで動かなかったうーちゃんが喋った。と、思ったらこーちゃんを殴った。


『うーちゃんが怒ってるの…』


珍しく怒り心頭なうーちゃんにぽちを抱きしめたまま後退りする。


「いってーな!!何すんだよ!」
「誰が騙されたりするか、己と一緒にすんなや。あンのアマ、真面目な顔してやってくれるやないか!ワシを誰やと思ってんねん!!」


ガンガンと大木を蹴るうーちゃんはとても怒ってるのー。
うーちゃんが恐いです。


「…別にのォ、ワシはあの女に騙されたわけやないねん。」
『?』


私とこーちゃんに背中を向けながらそう話すうーちゃんに首を傾げる。
騙されてないの?うーちゃん騙されてないの?


「ちょっと疲れたから、休んどっただけじゃ」
「(か…哀しすぎる…)」


だぁっ、と涙を流してるこーちゃんの横で私とぽちはうーちゃんに、にこぉっと笑顔を送る。


『そうだったの!!うーちゃんはやっぱりすごいの!!』
「空さんはー騙す人ですからー、騙されたりはーしませんー。」
「当たり前やん!」
「(騙されてるー!!)」


ニコニコと笑う私たちの横でこーちゃんが突っ込んでたことは知りませんでした。まる。


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bkm
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