鳥は空を飛ぶ 13


青い空!白い雲!


『海だーーーー!!!』
「海やー」
「水がいっぱいでーす。」


初めて来た海にドキドキする。
すごい!すごい!辺り一面ぜーんぶ水なのー!


「こら、あんまり遠くに行くな。」
『えー!でもでもね!こーちゃん!海に来たら人魚探さないと駄目なのー!』
「そうや。昔言ったことよー覚えとったなー。」
『えへへー!』


私の頭を撫でるうーちゃんに照れたように笑う。
小さいころ和尚様に読ませて貰った本にあった人魚を見てうーちゃんと海に行ったら人魚探そうね!って約束したの!
すると、海水でばちゃばちゃと遊んでいたぽちが首を傾げて聞いてきた。


「人魚ってなんですかー。」
「半分人で半分魚の生きもんや。」
『人魚はすごいの!声が綺麗なの!』
「……はしゃぐのはいいが、なんとかして船を手に入れねェと島に行けねェぞ。」


こーちゃんの言葉で何故、私たちが海に来たのか思い出す。

私たちが海に来た理由、それは長寿の薬がある偽り人の流刑地、撫子島に行くこと。

それに必要な船を探すためにここに来たの!


『じゃあ、人魚探しつつ船探すの!』
「ここには船がないんだってよ。」
『う、じゃあ、じゃあ!人魚探すの!』
「……それじゃ行けないだろう。」
『あぅー。』


こーちゃんに負けた私は座っているうーちゃんの背中に抱きつく。
こーちゃんは一つため息を吐くと何処かに行ってしまった。


『うーちゃぁん…こーちゃんどっか行っちゃったのー…』
「すぐ戻ってくるから大丈夫やろ。それより、ぽちと一緒に海に入らんの?」
『海!入る!』


うーちゃんの言葉にぱぁっと目を輝かせる。
海なの!初めて入るのー!


「ほな、着物脱がんと。」
『うん!』


さっそく着ている着物を脱ごうとする。
でも、それは私の手首を抑えたこーちゃんによって出来なかった。


『ん?』
「空!お前なにしてんだ!」
「ちっ、いいところやったのに。」
「年頃の、しかも嫁入り前の名前にそんなことさせんな!名前も!簡単に男の前で素肌なんか見せんな!」


こーちゃんはそう言いながら着崩れた私の着物を整える。
…お母さんみたいなのー。


『でも、なんでうーちゃん達の前で素肌見せちゃ駄目なのー?』
「そうや。名前は将来わしのになるんやしええやろ。」
「……名前。絶対に空の前で着物なんか脱ぐなよ。脱いだら喰われるからな。」


私の肩をガシッと掴んで私の目を見て真剣な顔で言うこーちゃんに私は思わず頷いた。


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bkm
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