夢を見た。
女の子と男の子が誰かに虐められてる夢。
私は助けられない。救えない。
ごめんなさい。ごめんなさい。
私はその言葉を呟き続ける。
なんで謝ってるのかはわからない。
ただ、謝らなくちゃいけない気がした。
くるり、女の子が私を見た。
そこで私の目が醒めた。
「名前?!目が醒めたんたか! 」
『うー、ちゃん…?』
目が醒めた私の目の前にはうーちゃんのどアップ。
なんだろ…?頭がぼーっとしてる。
『あれ?私、なにしてたんだっけ?えっと、確か……』
「アカン!!」
『へ?…っっっっ!!!!』
そうだ、そうだよ。
『うーちゃん、いーちゃんが、いーちゃんが!!!みんな、殺しちゃうの、やだやだ。うーちゃんうーちゃん』
「名前、こっちに来いや。」
そう言ってうーちゃんは寝ていた私を横抱きにする。
『うーちゃん?どこ行くの?みんなを助けないと。みんな死んじゃうよ。』
「……………」
『うーちゃん!!』
私が呼びかけてもうーちゃんはただ黙って私をどこかへ連れていく。
ある扉の前に来るとお医者さんがいた。
「残念ですが内臓の損傷が激しく…、おそらく…もう…」
『うーちゃん?ねぇ、誰のこと?違うよね?誰も死んじゃわないよね?』
私はうーちゃんに横抱きにされたまま、うーちゃんの肩を揺する。
それに何も言わずにうーちゃんが扉を開けるとそこには私の大好きなお父さんみたいな人が横たわっていた。
「………ジジイ。」
『和尚様…、?』
「…おお…空と名前か…。良かったわ…無事だったのじゃな…」
『無事じゃない!!和尚様が…和尚様が…!』
私が半ば叫ぶように言うとうーちゃんが私の口を抑える。
「そのセリフ二回目や。ボケたかジジイ。」
「ふふふ…よかったわい…名前もすまんのう…、それにしても、空…声が…声から暗さが消えておる。もう、囚われてはおらんのじゃな。」
「当たり前や。よー考えたら悪いんは強盗でワシやないわ。」
私は涙目になりながら和尚様の手に自分の手を重ねる。
「ふふふ、そうじゃ…その通りじゃ…ワシもな…昔…家族を失った…娘がな…崖から落ちて、頭の傷はその時についたんじゃが…守れなくてのォ…だから娘の分も…百人でも千人でも…一人でも多く人を救うことが…ワシの夢じゃった…ふふふ…お前の心が救えたなら…ワシも幸せじゃ。」
『和尚様…、私もね、私もね、和尚様に拾われて幸せだったの。大好きだったよっ、うーちゃんとね、和尚様と三人で遊びたかったの…!お父さんみたいだった…!』
大好きな大好きな和尚様。
本当のお父さんなんて知らないけどお父さんみたいだった。
私の大切な大切な家族。
「ワシも、お前たちを本当の子どものように思っていた…大切な…家族じゃ。おお、そうじゃ…里の子たちはどうした…?みんな元気でおるか…?」
「………………」
『っ、』
和尚様は知らない。見えない。
私は知ってる。見た。
みんなが殺されたのを。
思わず私はうーちゃんの頭をぎゅっと抱きしめる。
「当たり前や。ジジイは見えへんやろけど、みんな入り口の所でジジイを心配しとるわ。」
うーちゃんがついた【嘘】。
「はは…そうか…それは…よ…かっ…」
「っ、オイ!ジジイ!ジジイ…!」
『ぉっしょう、さまっ!』
それは和尚様を幸せにした。
だって和尚様の死に顔は、とっても幸せそうだったもん。
『うーちゃんうーちゃん、』
「っ、なんや。」
『私はずっとうーちゃんと一緒だよね?うーちゃんは私を置いていかないよね?』
「当たり前や。ずっと一緒に決まっとるわ。」
それからしばらくの間、私とうーちゃんは和尚様の傍で泣いていた。
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bkm