鳥は空を飛ぶ 3


『うーちゃんどこ行くのー?和尚様、うーちゃんまたどっか行っちゃったよ!!』


和尚様がうーちゃんにお説教するとうーちゃんは【冗談】を言ってどこかに行ってしまった。
里に戻っていーちゃんが何処かに行ってから私は和尚様と手を繋ぎながら話す。


「まったく、空め。ワシの言うことも聞かんで。」
『和尚様はなんでうーちゃんにだけ【嘘】ついちゃダメって言うのー?私が嘘ついてもそんなこと言わないのにー!』


私の言葉に和尚様は驚いたような顔をすると、次にはいつもの優しい笑顔でふわりと笑った。


「お前は聡い。記憶がなく無表情だったお前は最初どうなるかと思ったが、今は笑えている。 空もお前にだけは心を許しとるようじゃしのう。これからも空を頼むからな。」
『私ね、うーちゃん大好きだよ!でもね、和尚様も大好き!だって和尚様ってお父さんみたいなんだもん!!だからね、早くうーちゃんと仲直りしてね?そしたらみんなで遊びたいのー!!』
「!そうじゃな。ワシも空が早く気付いてくれることを願っとるよ。」


和尚様もうーちゃんも里のみんなだーいすき!
私はニコニコしながら和尚様の手をぎゅっと握った。



*-*-*-*-*-*-*-*-*-*



燃える、燃える。
真っ赤な真っ赤な火。
今まで住んでいた家は真っ赤な火に包まれごうごうと音を立てて燃えている。

叫び声が聴こえる。
それは私が今まで家族だと思っていたみんなの声。


『うーちゃん、うーちゃんどこ?帰ってきてよぉ。』
「名前!早く裏道から逃げるんじゃ!!」
『でも、でもうーちゃんいないの。それに和尚様も一緒じゃなきゃヤダよぉ』


名前は泣きながら駄々をこねる。
絶対に無理だと分かりながらも。
そんな名前に対し和尚様はふわりといつもの笑顔で笑う。


「心配するな。ワシらはちゃんと後で行く。今はお前だけで皆と一緒に逃げなさい。」
『ほんと?絶対?』
「ああ。約束じゃ。」


それに安心したのか名前は半ば無理矢理笑顔を作ると「約束ね!」と言ってみんなと同じように裏道へ向かった。

裏道に着いて名前が見たのは先刻の真っ赤な火よりも紅い深紅の血の海。


『ぇ…?な、んで、?』
「あはっ。教えてあげよっかぁ?」


茫然と立ち尽くす名前の後ろから聴こえるのは毎日のように聴いていた家族の声。


『いー、ちゃん、?』
「名前は殺さないから大丈夫だよ?だって僕と天邪狐三人でずーっと一緒に住むんだから。」
『ゃ…来ないで、嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌ぁぁあぁああぁあ!!!!ぁ、あ、わ、たし、悪いことし、てない!!姉様、姉様姉様!!!助けて!!ごめんなさい、ごめんなさい私が全部悪いの、姉様は悪くないの!!いやいやいや!!父様こっちに来ないで!!私は、名前は悪いことしてないの!!!名前に触らないで!!姉様姉様姉様!!!姉様を返して!!蝉にも触らないで!!!名前たちに触らないでぇぇぇええぇぇええ!!!!!!』


名前が凄まじい勢いで叫びだしたかと思うと突然人形のように足から崩れ落ちた。


「ふーん。やっぱり名前はおもしろいなぁ。」


入谷はそう言って血の海に倒れ血だらけな名前を抱き上げる。


「あー、早く天邪狐に教えてあげたいなぁ…」


名前のこと。


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