鳥は空を飛ぶ 2


そよそよと風が吹く。
そんな村を一人の少女が走る。
走って走って辿り着いたのは一人の少年の元だった。


『うーちゃん!うーちゃん!和尚様うーちゃんのこと怒ってたのー!仕事サボったーって!』
「あー?なんや名前か。今魚釣っとんのや。こっち来てみぃ。」
『お魚?今日の夜はお魚なのー?』


名前は空に話を逸らされていることに気づくはずもなく【魚】という単語に簡単に食いつく。
空はそれにニヤリと笑いつつ、名前を自分の膝の上に座らせた。


『うーちゃん、私ねお魚はお刺身がいいのー』
「刺身はアカン。川魚は焼かんと。」
『えー…、お刺身食べたかったのに!』
「ほな、今度作ったるわ。」
『やったー!うーちゃん大好き!!』


名前はにこにこしながら空に抱きつき空の胸に擦り寄る。
空はそんな名前の頭を優しく撫でる。
それに名前は目を細めてうっとりしていた。
それからしばらく二人がそうしていると、空が仕掛けた釣竿に反応があった。
名前はそれに気づくと空の上から素早くどく。


「おっと!来た、来た!」
『わっ!うーちゃん凄いね!大量だよー!』
「これでジジイも文句言わないやろ。」


名前がはしゃぎながら魚の周りを駆けているとそこにもう一人の声があった。


「見事な擬似餌だね。釣りは魚との騙し合い…それなら魚も騙されるよ。」
『あ、いーちゃんだ。』
「なんや入谷か。何か用か。」


名前は入谷の姿を確認すると空の後ろに自分の姿を隠す。
空はそんな名前を不思議に思いつつも名前の身体を背中から出し自分の腕で抱きしめる。
そんな二人に入谷は目を細めると、すぐに何事もなかったかのように話を続けた。


「用か、じゃないよ。君また掃除サボっただろ。和尚様がカンカンだったよ。」
『あ!私もそれでここに来たんだった!うーちゃん話逸らしたのー!!』


今さら気付いた名前は空の腕の中で暴れるが空はそんな名前を離す気がないらしく、さらに力を強めるだけだった。


『うーちゃんのばーか。』
「はいはい。」
「、あれ?天邪狐コレなに?」


二人の横で入谷が呆れていると何か黒いものを見つけた入谷がそれを手に取る。


「あ?ああ、爆弾。」
「!?ば!?」
『爆弾ー?うーちゃん爆弾作ったのー?』
「他にも閃光弾、硝煙弾毒やら薬やら色々あるで。」


よく意味がわからなかったらしい名前は曖昧に「凄いねー」と言うだけだった。
しかし、意味がわかる入谷は多少大袈裟に驚く。


「お前、何する気ィ!?」
「別に、人に使うワケやないわ。狩りとか釣りと時にも使えるやろ。」
『じゃあ、じゃあお刺身も食べ放題?』
「そうやなー。名前がワシとずっと一緒におるんやったら食えるんちゃう?」
『わーい!じゃあ私ずーっとうーちゃんと一緒にいるのー!』


それに悪人のように笑った空がいたことは名前が気づくはずもなかった。


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bkm
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