すべてが壊れた日



ズブリと私は女の体に苦無を突き立てる。

女が悲鳴あげてるのだって、周りが悲鳴あげてるのだって関係ない。
僕は女の体に何回も何回も苦無を突き立てる。
女が絶命してもなお、鋭く尖った苦無を突き立てる。

すると、僕の身体には鈍い痛み。
はて?と首を傾げて痛みの箇所を見ると、そこからはダラダラと私の大嫌いな血がたくさん流れてた。


『アハ、ありが、と、』


ぷっつん。
私はそうしてあっけなく絶命した。




綾人先輩が死んだ。
仲間に、忍術学園の仲間に殺された。


「なんで、なんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんで、」
「きり丸落ち着け!」
「うるさいうるさいうるさい!!今まで俺たちを助けてくれなかったくせに!!なんで殺した!なんでなんで、あんな女、いなくなって正解だった、正解だったんだ!!!」


近くで騒いでいるきり丸と鉢屋先輩をぼっーと見る。
それからまた、横たわってる綾人先輩に目を向けた。


「な、まごへ、なんで血がでてんだ?」
「ふふ、なんでだろ?…ね、綾人先輩、起きてください。」


となりにいる三之助に笑いかけながら僕はグッタリとたくさん血を流して倒れている綾人先輩の肩を笑いながら揺さぶる。

なんでですか?なんで先輩はそんなに穏やかなんですか?なんでそんなに幸せそうに横たわっているんですか?ねぇ、なんで、


「先輩…?」
「そこから全員動くんでない!!」


僕と三之助が綾人先輩を起き上がらせようとした時に、大きな声が僕らの動きを制した。


「学園長先生…」
「新野先生は綾人を医務室に。他の者は命令があるまで教室に待機じゃ!」


先生の言葉にその場にいた人が全員素早く動く。
僕と三之助ときり丸と四郎兵衛と鉢屋先輩はそこから動かない。

どうして、連れて行くの?どこに連れて行くの?僕たちの綾人先輩をどうするの?



僕たちは、この日、すべてを失った。

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