すべてを壊す日



『サヨうナラ。』


その笑みは綺麗で美しくて、
涙が出そうになったんだ。





綾人先輩がいない。
それに気付いたのは、俺たちの様子を見に来た鉢屋先輩だった。


「きり丸は四郎兵衛に綾人のことを知らせろ。平太と伏木蔵は…無理だな。なら、お前たちはここで綾人の帰りを待て。私は孫兵と三之助のもとへ行く。」


平太と伏木蔵は綾人先輩がいなくなったことに気が付いてから瞳にはなにも写さない。
綾人先輩の寝ていた布団に縋り付くように、それをぎゅっと握り締めて離さなかった。

俺は鉢屋先輩の言葉通りに四郎兵衛先輩の部屋に走って向かう。
嫌な予感がするんだ。
綾人先輩が消える、そんなとても嫌な予感。

ガラッ!

「四郎兵衛先輩!」
「あれ〜?きり丸どうしたの〜?」


ガラリと襖を開けるとそこには起きたばかりのような四郎兵衛先輩。


「あー!そんなのん気に欠伸してる場合じゃないッスから!!綾人先輩が消えたんスよ!!!!」
「!!わかった!」


そこから、四郎兵衛先輩の行動は早かった。
すぐに着替えて俺の目の前に立つ。
すると、今度は俺の手を引っ張って走る。


「先輩!孫兵先輩と三之助先輩のとこに向かってください!」
「はーい!」


さすがは体育委員会。
四郎兵衛先輩は俺の手をつかんだまま走る。


「あ!あそこッス!」
「?なんで、あそこに集まってるんだろう?」


鉢屋先輩たちがいるところには、たくさんの人が集まっていた。
きっとあの女がいるんだろう。
それに不思議に思いつつ、みんなが集まる場所へ向かう。

すると、いたのはあの女と血塗れの綾人先輩だった。

綾人先輩は大きな声で全体に聞こえるように話し始める。


『あは!みぃーんな来たね!僕たちの、私たちの最期を見てくれるんだね!嬉しい嬉しいな!みんな、僕が私が狂ってる、って言ったよね?違うよ、僕も私も狂ってない!もし、狂ってるとしたら誰のせい?なんのせい?あは!それは簡単!…お前のせいだよ。』
「や、やめて…!」
「久木!何をするつもりだ!」


クルクルと表情を変えて話す綾人先輩。
その瞳には狂気が見えて、
鉢屋先輩はそんな綾人先輩をただ黙って絶望したように見つめていた。


『あ、さぶろー。僕が私に戻ってごめんね!うん、でも、僕は私を止められないし止めたくないんだ。孫兵も三之助もきり丸も四郎兵衛も伏木蔵も平太も、だぁいすきだよ!一番だぁいすき!愛してる!』


ギュッと、綾人先輩は笑顔のまま苦無を女めがけて振り上げた。


『サヨうナラ』


ポロリ、

綾人先輩の瞳から涙が零れた。


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