少年が思案する日



忍術学園に着いてすぐさま綾人を自室に寝かせる。
綾人の息が安定したのを確認すると、綾人が寝る布団を心配そうに囲む六人を見た。


「悪かったな。私がお前たちを助けられなくて、」
「別に、僕たちには綾人先輩がいてくれたので構いません。」


そっけない態度で三郎の言葉に返す孫兵を見て苦笑する。


「なんで鉢屋先輩は綾人さんと行動しなかったんスか?」
「私にもいろいろあってな。まず、学園長に天女討伐の許可を貰っていた。次に腑抜けた奴等の代わりに忍務。そして、山のあちこちに罠を作らねばならなかったんだ。」
「「「「「「!」」」」」」


鉢屋の言葉に六人は驚いたように目を開かせる。
鉢屋はそれを無視して眠っている綾人の頭を愛おしそうに撫でる。


「鉢屋先輩…それで、天女討伐の許可はいただけたのですか?」
「……いや、無理だった。」


孫兵を見ずに鉢屋は綾人だけを見て答える。
鉢屋の答えにいち早く反応したのはきり丸だった。


「っ!な、んでッスかぁ!天女が忍術学園に危害を与えてるのは明らかじゃないスかっ!!!」
「きり丸の言う通りだ。先生方も土井先生を始め、天女討伐に賛成している方もいる。だが、肝心の学園長先生が天女討伐に反対だからな。」
「っ、」


あり得ない。
きり丸は呆然としたようにその場にうなだれる。
三之助は部屋の角で何かを考えるように黙っているだけ。
平太と伏木蔵、それに四郎兵衛は綾人を囲むように座り、孫兵はぎゅっと拳を握る。



『そう…そうだった……』
「綾人?!」
「「「「「「綾人先輩?!」」」」」」


その時だった。
今まで眠っていたはずの綾人が目を覚ました。
しかし、その目は虚ろで、


『ふふ…そう……よね…』
「綾人……?なにをやろうと…?」


その手に持つのは、忍の武器でもある苦無。


『………コロス…の…』
「っ、悪い。」
『ぁ…、』


何かを感じとったのか鉢屋は綾人の首に手刀を落とした。


「鉢屋先輩?!なにしてんスか!!」
「…オイ、これから綾人をこの部屋から出すなよ。」
「…なぜですか?」
「いいから、絶対に、出すなよ。」


鉢屋の迫力に押されてか、その場にいた六人は息を飲んで頷いた。


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