彼が血を浴びる日



たくさんの血をその一身に浴びる四年い組の久木綾人先輩。

その姿はとても美しくて、綺麗で、妖艶で、綾人先輩は男だけど、天女様なんかより天女様らしかった。



『しほ〜はっぽ〜ろっぽ〜しゅ〜りけん』
「先輩…その歌なんスか?」
『え?いい感じの歌だよー!』


ほらみんなで歌おー!
綾人の言葉に伏木蔵と平太が一緒に歌おうとする。
綾人はそれにニコニコしながら歌う。
きり丸と孫兵はそんな三人を見ながら呆れたように笑った。


『右よーし、』
「「左よぉし、」」
「「『山賊はいないよー!/でぇす』」」
「せ、せんぱ、真ん中!」
『へ?』

そう言って孫兵が指した方へ綾人が顔を向けると、あら不思議。
10人以上の山賊がニヤニヤと笑いながらこちらを見ていた。


『あっちゃー!真ん中見忘れてた!』
「おいおい。兄ちゃん余裕そうじゃねぇか。そのじいさん置いてったら兄ちゃんらの命は見逃してやるよ」
「ひ、ひぃぃい!!」


おじいさんは怯えるように身を縮こませる。
すると、近くにいた綾人が突然笑い始めた。


『あはは!あんたら馬鹿だねー!弱いんだから帰ればいいのにー!僕に敵うわけないよー?』
「あんだと!?……はっ!そんなに言うならてめぇらも売ってやるよ!」


山賊の言葉に綾人はピクリと身体を動かす。


『…てめえらも、ってどういうこと?』
「うるせぇ!関係ねぇだろ!」
『…わかったー。孫兵、』
「なんですか?」
『僕、ちょーっと用事が出来たから他のみんなを守ってね。あ、僕の子も守ってくれるから。』

ピィィィイイイ!
綾人がそう言うと孫兵の返事も聞かずに首に下げていた笛のようなものを吹いた。
すると、森の茂みからは通常よりいくらか大きな狼が二匹、空からは鷹がおりてきた。


『んじゃ、三匹ともみんなを守ってねー!で、殺す必要があったら殺してもいいよー!孫兵はみんなを守りきること!』
「そんな…!綾人先輩はどうするんですか!」
『だーいじょーぶ!僕はね、』
「うぉぉおぉおお!!」


襲いかかってきた山賊を一本の苦無で首を掻っ切る。


『今、怒ってるんだから。』


綾人は血を浴びながらそう言って四人に笑みを零すのであった。


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