新しい生活 [ 6/56 ]

二人に引き取られて一週間が経った。いまだに私は誰とも口をきいていない。特に理由はないけど口をきいたら負けな気がする。理由はないけど。
それでもあの二人は私に毎回話しかけてくる。よく分からない。ほっとけばいいのに。てゆうか、普通はほっとくよね。だって私ならほっとくもん。自分の名前も教えてくれないような子。


「これ食べて?貴女死ぬわよ?」


クシナは私に毎回ご飯を勧めてくる。けれど、私はそれを受け付けない。


「もう一週間だよ…キミの体が心配なんだ。」


ミナトは私の体の心配をしてくる。よく、分からない。


ミナトSide

一週間前、木の葉の里の門の前に1人の少女が茫然とした様子で立っていたところを里の暗部に保護された。少女というには体がまだ幼く、しかしその目は大人にも負けないくらい強い瞳をしていた。
その少女は木の葉の里を敵視している巡音一族の少女だった。さらに言うならば、少女は当主の血を引いているようで、その証に銀髪の毛先が紅く染まっていた。
少女は名前も歳も何も言わずただただ三代目の目を逸らさず見つめていた。

驚いたことに少女は気配を消して三代目の部屋に入ったオレに気付いた。暗部でさえ気付かないというのに、だ。少女に興味が湧いたオレは預かることにしたが、いまだに少女は沈黙を守っていた。


「ねぇミナト。あの子もう何も食べないで6日よ。本当に餓死しちゃう。」
「オレもそう思うけど…。なんであの子は何も言わないんだろう?」
「もうあんなに腕が細くてどうしよう」


クシナも少女のことが心配でたまらない様子だった。もちろんオレも心配。それでも少女はオレ達の様子を見て心底不思議そうな顔をするのだ。


「〜〜〜!食べろって言ってるってばね!」
『!?』
「ちょ!クシナ!驚いてるってば!」
「ミナトは黙ってて!」
「……はい」


とうとうクシナが怒った。一週間にもなるとクシナも我慢できなかったみたい。


「私達が心配してるっていうのに毎回毎回不思議そうな顔して!食べないと死ぬってばね!」
『……だって食欲ないし。』


?!しゃべった…?


「それを言えばいいってばね!なんで言わなかったの!?」
『…………ごめんなさい』

クシナは頭に血が登って気付いてないみたいだけどしゃべってる!しゃべってるよ!


「クシナちょっと待った!」
「なんだってばね!」
「女の子しゃべってる!しゃべってるよ!」
「あ…ホントだ……」
『(そんなに珍しいの?)』


とにかくクシナを落ち着かせると椅子に座って少女について話を聞くことにした。


「えーっと名前は?」
『リンネ。巡音リンネ。』
「何歳?」
『………五歳』


驚いた。七歳くらいかと思った。


『…確か巡音一族と木の葉の里って対立?みたいなことしてるんですよね?じゃあ私ここ出ていきますね。私、木の葉に用があって来たわけじゃないですし。』
「なんでだってば?」
『?だって木の葉に巡音一族がいたら明らか怪しいじゃないですか。それに私、化け物らしいんで迷惑かけると思いますし』


この子は、何を言っているんだろう、?
五歳の子供はまだ親の庇護を受けていていいはずだ。何故この少女はそんな悲しいことを、


「違うってば……」
「クシナ…?」
「リンネは私達が拾った!だから、私達の家族になるってばね!」
『…何を、言ってるの?』
「文句は許さないってば!もちろんミナトにも文句は許さないからね!リンネは私達の娘!」
「はいはい」


リンネはポカーンと感じで口を開けていて、オレはクシナの言葉とリンネのその表情に思わず笑ってしまった。



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