知ってた、分かってた。 [ 26/56 ]

片手では私の口を塞いだまま、カカシはサスケくんを踏む。
いや器用だとは思うけどさ、私苦しいんだけど!!!!!


『んーんーっ!!!』
「お前ら忍者なめてんのか、あ!?何の為に班ごとのチームに分けて演習やってると思ってる」
「え!?…どーゆーこと?」


サクラちゃん、サクラちゃん。そんなカカシの言葉に突っ込んでる暇はないよね。私が苦しそうで可哀想だよ。
ナルトはナルトでカカシに突っかかってるし。
あれ?私のことはスルーなの?


「チームワークだ。」
「「「!!」」」
『………』


答えはいいからさっさと私を離せ。
しかも、やはりというかなんというか。いくら私が念使いでも大人、しかも男の力に勝てるわけもなく、両手でもカカシの手を退かせない。
くそ。ムカつくなぁ。


「なんでスズ二つしかないのにチームワークなわけェ?チームワークどころか仲間割れじゃない!」
「当たり前だ!これはわざと仲間割れするよう仕組んだ試験だ。」
「え!?」


よし。後でミコトに火の粉をカカシにやってもらお。絶対やってもらお。
くそ、ハゲろ。カカシ。


「この仕組まれた試験内容の状況下でなお、自分の利害に関係なくチームワークを優先できる者を選抜するのが目的だった。それなのにお前らときたら……」
『んー、ん、んんっ、(こ、の、死ねっ)』
「……」
『?!』


こいつ…私が死ねって言ったとたんに力強くしやがった。


「サクラ…お前は目の前のナルトじゃなく、どこに居るのかも分からないサスケのことばかり。ナルト!お前は一人で独走するだけ。サスケ!お前は三人を足手まといだと決めつけ個人プレイ。リンネだけがこの試験内容の答えを出せていたってーのに。お前らはリンネの誘いを断った。」
「「「!!」」」


カカシの言葉と同時に私に突き刺さる三つの視線。
ちょ、三人とも私を見ないで!
見るなら私を助けてよ!!!!

…いや、私落ち着こう。うん。
ほら、私ならオーラを集中させれば大丈夫。


「チームワークを乱す個人プレイは仲間を危機に落とし入れ殺すことになる。任務は命がけの仕事ばかりだ。…これを見ろ。この石に刻んである無数の名前。これはすべて里で英雄と呼ばれている忍者達だ。」
「!それそれそれそれーっ!それいーっ!オレもそこに名を刻むってことを今決めたーっ!!英雄!英雄!犬死にらなんかするかってばよ!!」
『っ、』
「…が、ただの英雄じゃない……」


ナルト……それはダメ。ダメだよ。
そこは、


「任務中殉職した英雄達だ。」


それを聞いて私の体から力が抜ける。
知っていた。そこに、私の愛してる家族の名前があること。
でも、信じたくなかった。
だって、だって大切だったんだ。とても、とても愛してたんだ。

私の体から力が抜けると同時にカカシの手は私の口から離れ、私の腰に移動した。


「お前ら…!最後にもう一度だけチャンスをやる。ただし昼からはもっと過酷になる。挑戦したい奴だけ弁当を食え。ただしナルトに食わせるな。」
「え?」
「ルール破って一人飯を食おうとしたバツだ。もし、食わせたりしたらそいつをその時点で試験失格にする。ここではオレがルールだ。分かったな」


カカシはそう三人に威圧すると近くの森に身を隠した。
これからのことがわかる私は力が入らない体に力を入れ絶をする。
気配を完全に消したところで私はカカシと向きあった。


『なんで、なんで私を合格にしたの。私は合格にしないでって言った。』
「お前はちゃんと答えを出せていた。それを不合格にするのは無理だ。」
『っ、じゃぁ、なんであそこが慰霊碑だって言ったの?!必要なかったはずだよ!!!!それにわざわざ私の口を抑えてさ!』


ムカつくムカつくムカつく!!!!!
分かってた。合格を不合格にするのは無理なくらい。でも、でもちょっとは考えてくれたっていいじゃんか!!!!
それに、慰霊碑だって言う必要だってなかった。
こいつが…カカシが言わなければ私は、


『確認しないで済んだのに……!』


大嫌いだいきらい大キライ。
カカシは私がいない間、あの子を愛してあげられた。大切にしてあげられた。
それなのに、それなのにそれなのに!!!!!!
カカシはしなかった。一人でもナルトを心配してくれるやつが近くにいたらナルトはもっと、もっともっと幸せになれたのに!!!!!


「やっぱりお前…」
『アンタなんて嫌い。だいっきらい!!!!』
「九尾の時の……」


その言葉を聞いたとたん、私の中の何かが弾けた。


『それが、なに?そのせいで私は幽閉されたんだ!!!それに、それにクシナもミナトも助けられなかった!!!家族だったのに、愛してたのに。ねぇ、分かる?私の気持ち。最期に私はナルトを頼まれた。でも!私は幽閉されてナルトを愛せなかったんだ!!!あんたは、生きてんのに、近くにいるのに、なんで、なんでナルトを守ってあげなかったの……?』


ボロボロと、話してる間に涙が勝手に零れ落ちる。
本当は、本当は分かってるんだよ。
カカシに八つ当たりしてるって。
でも、悔しい。ムカつく。


「…ごめん……」
『謝るな!!!!なんで、なんで謝るの?!!カカシなんてきらい、だいきらい。』


苦しい、苦しい。
息が続かない。


『……私、今日は帰るから。ナルトたちには体調が悪くなったって言っといて。』
「…ま、しょうがないネ。」
『……ごめん。』


私はその言葉を放つとミナトに習った時空間忍術でそこから飛んだ。



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