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くぁ、と欠伸をしてから腕を伸ばす。
やっぱりテントは寝心地悪いなぁ。

そう思いながらさらに欠伸。


《リンネ、女の子が大きな口で欠伸しないで。》
『うぃー。』
《………》


出雲の言葉に適当に返事したら電気ショックをやられたことは私の心に秘めておこうと思う。


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白 Side

ベッドで横になっている再不斬さんを見ていると二人の部下を連れてガトーがやってきた。


「あんたまでやられて帰ってくるとは霧の国はよほどのヘボと見える!!部下の尻ぬぐいも出来んで何が鬼人じゃ…笑わせるな。」
「…………」


カチャリ、と二人の部下は腰にかけている刀に手をかける。

居合いか……?

そんなことを考えて僕は臨戦体制に入る。


「まぁ待て…」


するとガトーは二人を抑えて再不斬さんが寝ているベッドに近づく。


「なぁ…黙っていることはないだろ……何とか…」

ガッ!

再不斬さんに手を触ろうとしたガトーの手首を思いっきり掴む。それは骨を折るくらいに。


「汚い手で再不斬さんに触るな…」
「ぐっ!お前…」


僕がガトーの手首をガッと掴むと後ろの二人が刀を抜いた気配を感じる。
それを一瞬で移動して二人の刀を取る。
そしてそれを二人の首に突き立てた。

あぁ…ムカつくなぁ…


「やめたほうがいいよ…僕は怒っているんだ」


ゴクリ、と三人が息を飲んだことが分かった。


「つ、次だっ…!次失敗を繰り返せば…ここにお前らの居場所はないと思え!!」


そう言ってバタンッと三人が出て行った。


「白…余計なことを…」


ベッドの下で苦無を持ち、いつでもガトーを殺せた再不斬さんが僕に言う。
それに僕はニコッと笑った。


「わかっています…ただ今ガトーを殺すのさ尚早です。ここで騒ぎを起こせばまた奴らに追われることになります。今は我慢です。」
「…ああ……そうだな…」


再不斬さんがそう言うとクスクスと笑い声。
それにバッと後ろを向いて再不斬さんを守るように立つ。

全然気配を感じなかった…!


『我慢しちゃうの?そんなのつまんないよぉ?』


そう言って無防備にクスクスと笑う少女は僕らとはすべてが違って見えた。




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