月が綺麗ですね
美しいと思いました。
手首から血を流し、水が滴る彼女を。
でも、彼女を死なせるわけにはいかないのです。
だって、僕はずっとこの時を待っていたんですから。
彼女が唯一の人に拒絶され、絶望するのを。
「ね、桃井さん。」
『…ぅ……』
小さな呻き声。
ああ、可愛らしいです。
血を流し過ぎて、意識がない彼女を抱き上げる。
その豊満な胸のわりには、僕でさえ抱き上げられる程に軽い彼女に庇護欲を注がれる。
きっと、この人は青峰くんがあの女に惑わされてから、食事をとってなかったんでしょう。
愛おしい愛おしい彼女。
これからは、僕が青峰くんの代わりに彼女の世界になりましょう。僕が彼女の唯一の人になりましょう。
僕が、彼女の居場所に。
白い包帯が巻かれた手首に唇を添えると、彼女の唇を黙って奪った。
「やっと、僕のものにできる。」
涙をほろほろと流し、青峰くんの名前を呼ぶ彼女を一生かけて愛して愛して愛そう。
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