彼女の世界は消えたのです



ふんわりと至極幸せそうな彼女を見てると、こっちまで幸せを感じる。

ああ、やっと捕まえた。

僕は彼女が、ゆづるが欲しかった。
青峰くんだけに心を許す彼女を自分のものにしたかった。

だから、僕はあの女を使った。
案外簡単でした。
青峰くんがあの女を好きになることも。
青峰くんがゆづるを捨てるのも。

まあ、自殺を図ったのには、驚きましたけど。

隣を歩く彼女の手首を持って、手首の傷痕に唇を這わす。


『どうしたの?』
「いえ、手首に痕、残っちゃいましたね。」
『…あ。本当だ。テツくん、怒る?』
「いいえ。ゆづるが僕のものになった証ですから。怒りませんよ。」


僕の言葉に無邪気に笑みを零すゆづる。

以前まで、その笑みは青峰くんのだけでした。

でも、今は僕だけのもの。
僕だけの、ゆづるさん。

絶対に、離しません。

彼女の世界は消滅したんです。
彼女の記憶から青峰くんが世界だった記憶は消えたんです。

今は僕が愛しい愛しいゆづるの世界です。


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