生も死も、俺が握ってた
俺の命令だけを聞く人形のようなやつだった。
幼い頃からの幼馴染である、桃井さつきは俺の人形だった。都合のいい、なんでも聞く人形。
俺が「ゆづる」と呼べば、すぐに来る。
その人形が、俺の好きなやつに手を出した。
だから、棄てた。
棄てた日から、あいつは学校に来ない。
家にも帰ってきてないらしい。
まあ、俺には関係ねぇけど。
「大輝。」
甘い蕩けるような声が俺の名前を呼ぶ。
俺にはこいつだけいればいいんだ。
そう。こいつだけ。
なのに、
『テツくん、テツくん。』
「なんですか?」
『テツくんだあいすき!』
「僕はゆづるのこと、愛してますよ。」
『!えへへ…』
ザワザワと騒ぐ胸を抑えながら、黒い靄のようなものが、俺の中で生まれたのがわかった。
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