無くしたのは、きっと道徳心とかそんなもの



圧迫感を感じて目を醒ます。
サラサラな青みのかかった髪が視界に入る。


『?…て、つく、ん、?』


ポツリ、呟く。

なんで、わたしはここにいるの?
なんでわたしは生きてるの?
やだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだ
死ななくちゃ死ななくちゃ。

こ の 世 界 か ら 消 え な く ち ゃ

自分の躰に巻き付いてるテツ君の腕を抜けて、とにかく探す。

どこどこどこどこどこどこどこどこどこ?
わたしを殺してくれる道具はどこ、?
わたしを世界から弾き出すための道具は?


「なにを探してるんですか?」


ビクリ。身体が震える。
悪いことをしてたのが見つかってしまった子どものように。


『テツく、ん、』
「桃井さんが探してるものって、これですか?」
『!ぁ…』


テツくんが取り出したのは、わたしの持っていた剃刀。
わたしを殺してくれる大切な道具。


『かえして…、』
「ダメです。返したら、また死のうとしますよね?そんなの、許しません。」
『なんで…』


死ななくちゃいけないのに。
世界から消えなくちゃいけないのに。


『もう、いきてるかちなんて、ないのに、』
「ありますよ。」
『ぇ…?』
「僕があなたを必要としてます。僕が、あなたを護ってあげます。僕があなたの世界になりますから。」


そう言ったテツくんは悲しそうで。


『ほんとお、?わたしの名前呼んでくれる、?ゆづるって、呼んでくれるの?わたしから、はなれないでくれる?わたしとずっとずっと一緒にいてくれるの?』
「はい。ゆづるが望むなら、僕は一生ゆづるから離れません。ゆづると一生を過ごします。」
『うそ。だって、大ちゃんは一緒にいてくれなかった。やくそくしたのに。ずっと一緒ってゆったのに。』
「僕は、青峰くんとは違います。」


ギュッと、テツくんがわたしを抱き締める。
トクントクンと、テツくんの心臓の音がわたしに聴こえる。
落ち着く、音。


『ずっと、いっしょ、?』
「はい。ずっと一緒です、ゆづる。」


ぐるぐるぐるする頭で、テツくんの言葉だけが、わたしの中に反響してた。


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