あの女に骨抜きになったのが悪いんですよ?



ゆづるが体育館から出て行くと、静寂が体育館を包む。
一番最初にその静寂を破ったのは僕だった。


「桃井さんが、僕と一緒にいるのがそんなに気になりますか?」
「テツ…てめェ…」


青峰くんが親の仇でも見るように僕を見る。
それに僕にしては珍しく頬を緩ませた。


「なんで青峰が怒るんですか?桃井さんを捨てたのは青峰くんですよ?」
「うるせぇよ!アレは俺のモンだろーが!」
「桃井さんはもう僕のものです。」


そう。ゆづるはもう僕のもの。
あの日、ゆづるが自殺を図った日、彼女は僕以外を捨てたのですから。

そう言った僕にそうとうイラついたのか、青峰くんが殴りかかってこようとする。
けど、それは紫原くんに止められてた。


「青峰、もうやめろ。」
「ふざけんな!俺のモン取ったのはこいつだろ!」
「青ちんには、あの子がいるじゃ〜ん」


赤司くんが静かに青峰くんを睨んでも、青峰くんは殺気だったまま、紫原くんに押さえつけられながら僕を睨む。

そんなに睨まれても、僕はゆづるを返しませんけど。


「知ってますか?彼女、自殺を図ったんですよ。」


その言葉に目を丸くするみんなに目を細める。


「彼女はあの日、一度死んだんですよ。」


貴方たちが、あの女に骨抜きになってる間に。

あの女は、ゆづるにマネージャーの仕事を押し付けたあげく、自分がゆづるにイジメられたと嘘をついた。
それを信じた青峰くんは本物の馬鹿ですよね。

まあ、青峰くんが馬鹿のおかげで、僕はゆづるを手に入れられたので、感謝してますが。


「とにかく、ゆづるはもうバスケ部と関わることはありません。」


僕から言わせてみれば、自業自得。
赤司くんは、あの女がゆづるにイジメられてると嘘をついた時点で、ゆづるを擁護すべきでした。
紫原くんは、もっと情報を知るべきでした。
黄瀬くんは、みんなに合わせずゆづるを護ろうとするべきでした。
緑間くんは、もっとゆづるを信じるべきでした。
青峰くんは、ゆづるの世界であるべきでした。


彼らが桃井さつきという存在を失ったのは、すべて彼らの責任なのです。


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