幸村Side

その日の夜。
あの女が心愛に虐められたとか宣ったことを、各学校の部長で話し合ってるときに、四天のマネージャーが来た。

“心愛が死ぬ”と。

その言葉に俺たちに戦慄が走る。
それは、俺たちの話し合いに参加せず、ただ聞いてただけの部員たちも同じで。

四天のマネージャーが指差した屋上に、みんなが走る。

走って走って走って走って。

心愛が死ぬなんて、嘘であれと願いながら。


「心愛!!」


最初に屋上の扉を開けた跡部が心愛の名前を叫ぶ。
次に、俺が屋上に入った。

そこには、


「心愛…?」


血だらけの心愛と、血の付いたナイフを持ってるあの女がいた。

声にならない声で叫ぶ。

いつも冷静だった跡部はそこにはいない。
半狂乱のようになって、心愛の名前を叫ぶ。
他のみんなもそれは同じで。

その中で、医者の息子だからか、医学知識が比較的ある忍足が二人と柳生と大石が視界の隅でいち早く動いたのがわかった。

心愛の顔は真っ青で。
まるで、今にも死んでしまいそう。

ああ。なんでこんなことになったんだろう。

俺たちは、ただ心愛が欲しいだけなのに。心愛の心が、身体が、すべてが。

心が押し潰されるように痛い。


もしも、神様というものがいるのなら。

お願いだから、心愛を死なせないでくれ。
俺たちには、まだ心愛が必要だから。







君は一人じゃないよ。



 
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