『あはっ。』


荒川蜜乃が腰を抜かして、地べたに座り込む。

私のお腹からは、たくさんの血。

ギュッと、最期の力を振り絞って、荒川蜜乃にナイフを掴ませる。

私の復讐は、貴方を世間的に殺すこと。

私は隠されてはいても、跡部財閥の娘だから、私を殺したと世間に思われたら、どうなるだろう。

ゆっくりと、笑みを浮かべながら、私の頬に何かが伝う。
それを涙だと知りながら、私はだんだんと広がっていく痛みに、ゆっくりと目を閉じた。


「「「心愛!!!」」」


最期に聞こえた声は、無視して。


跡部Side

「心愛心愛心愛心愛心愛心愛心愛心愛!!!!」


下腹部から血をダラダラと流しながら、ゆっくりと目を瞑っていった心愛に頭がおかしくなりそうなくらい、叫ぶ。

俺様の心愛を連れていくな!!
頼むから、俺を心愛と一緒にいさせてくれ!!


「跡部どきぃ!止血せなあかん!!」
「っ、たのむ…、」


忍足に心愛から離される。

だんだんと、血の気のなくなる心愛を見ながら、涙が零れそうになる。

頼む、頼むから、俺の心愛を連れて行かないでくれ。


「み、蜜乃じゃないわよ!!」


その言葉に、屋上に来た全員が、女を睨み付ける。

殺したい。この女を殺してやりたい。


「おい、なんつったんだよ…」
「亮!お願い、蜜乃じゃないのぉ!」
「触んじゃねぇよ!!!」


一番近くにいた、宍戸が振り絞るように声を出すと、女が血に濡れた両手で宍戸の両足にしがみつく。

それを女の頭を蹴り飛ばし離す。


「跡部、警察と救急車には通報したよ。今は、あの女を取り押さえよう。」


幸村の言葉に頷くと、女の髪を思いっきり引っ張る。


「痛い!痛い痛い痛い!!!」


なんか叫んでるが、そんなの関係ねぇ。
そのまま、女を物置部屋に閉じ込めた。








これは、私の復讐。



 
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