「あははっ!本当、心愛ちゃんってウザいよねぇ?」
きゃはは!と可愛らしく笑う荒川蜜乃。
私の、大切だった、人。
前の世界で、この子に全てを委ね、この世界では、この子に全てを懸ける。
私の人生は、この子の為のものなんかじゃなかったのに。気が付けば、私の全ては彼女のものになっていた。
私はこの子の復讐のために生きた。
人を寄せ付けず、顧みず。
一番、幸せだったのは、小さい頃かな。
景吾くんと、宗弘くんと三人で笑って。
もう、戻れない。
「黙ってないで、なんとか言いなさいよ!」
『っ、』
パシッ、荒川蜜乃の平手が私の頬にはいる。その拍子に、唇を切ってしまったらしく、口の中に鉄の味が広がった。
そんな私を見て、ケラケラと嗤う荒川蜜乃。
でも、それでもいいの。
証拠が、増えるだけ。
『ねぇ、なんで、私をここに…?』
『ねぇ、なんで、私をここに…?』
記憶がダブる。
「え?わかんないのぉ?あんたって、本当、ムカつくわ!!」
「え?わかんないのぉ?あんたって、本当、ムカつくわ!!」
私があの子に呼び出されたとき、私は同じことを言った。そして、あの子も同じように返した。
でも、前の私と今の私は違う。
ポケットに入れたナイフをギュッと握った。
『なんで…、なんで、そんなこと言うの?』
「あぁぁあ!!本当ウザいウザい!!あんたって、あいつと同じよね!!蜜乃のあとばっかりくっ付いてた金魚の糞!!」
『………』
「蜜乃の好きな人も奪ってさぁ!!あんなやつ、死んで当然だったのよ!蜜乃の命令聞く人形なんだから、蜜乃に黙って殺されてればいいのに、抵抗なんかして!!…まあ、いいわ。あんたは、蜜乃がちゃぁんと殺してあげるから。」
心が痛い。
ツキツキする。
彼女は、私の"死"なんてどうでもよかった。
知ってたはずだったのに。
口の端が弧を描く荒川蜜乃が、私に近付いてくる。
私も、荒川蜜乃に近寄る。
ナイフを取り出した。
キラリとひかるナイフを見て、荒川蜜乃が目を丸くして、後ろに下がる。
「っ、あ、あんた、なにもって、」
『大丈夫。よーく斬れるから。』
にっこり。
私は見せ付けるように嗤う。
わざわざ足音を立てて荒川蜜乃に近づけるば、荒川蜜乃はだんだんと後ろに下がる。
トンッ。
荒川蜜乃の後ろが壁しかなくなって、彼女と私の距離はゼロになった。
「ひっ…」
『私は、貴方に復讐するために生きた。』
「は……?」
ナイフを、思いっきり振り下ろした。
さようなら。
もう一生逢うこともない親友。
私の一生。
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