きっと、最良の選択だった。




その日の夜、私はあの子に呼び出された。

やっと。やっと、復讐が終わる。
鞄から、キラリと光るナイフを取り出す。
プツリ、試しに手首を切ってみた。
よく、切れた。


『きっと、出来るから。』


ガタガタと震える身体に、言い聞かせるように、私はその言葉を呟いた。


呼び出された場所は合宿場の屋上。

屋上の扉を開けると、夜風が私の髪を揺らす。
まだ、あの子は来ていない様子だった。

屋上にいると、足が、竦む。
場所は違うけど、私が突き落とされた場所も屋上だった。

今でも鮮明に思い出せる。


三日月の夜だった。
星が降って来そうなほど綺麗な夜。

重力と共に、身体が落下する。
一緒に落下しているあの子の口元は、弧を描いていて、

三日月と同じように、私を嘲笑っていた気がした。


今日は綺麗な満月。
あの日とは違う。

違う、って分かってるはずなのに、身体が震え、足が竦む。

高いところが怖い。


それは私が生まれ変わった証でもあった。


私は高いところが大好きだった。
あの青い青い空を間近で見るのが好きで、よく学校の屋上にいった。

でも、あの子に、屋上から突き落とされて、私は変わった。
好きだった屋上は恐ろしい場所になった。
青い青い空が、綺麗だと思うのと同時に憎く感じた。

それはすべて、この世界に来てからで。

でも、それももう終わり。


「あ、早く来てたんだぁ!」
『……蜜乃ちゃん。』
「あはっ!やめてよぉ?あんたなんかに、蜜乃の名前呼ばれたら、汚れちゃぁう。」


私の全てを懸けて、貴方を殺してあげるから。







たった一つの冴えたやり方



 
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