思えば、彼はいつでもそうだった。


跡部家に生まれたことを誰より祝福されてて、私なんかとは違う。
正統な跡部財閥継承者。

私は女だから跡部財閥を引き継げない。そもそも、私は跡部家の人間として世間に認められてない。


幼い頃から彼はキラキラと輝いていた。


イギリスの地でも彼は負けなかった。
自信満々のテニスで負け続けた時だって、彼は諦めなかったし、輝きは消えなかった。
いつでもキラキラと輝いてる彼と、世間に認められていない私。


いつも私を置いてどこかに行ってしまう。


でも、それでもいいと思ってた。

だって、私は彼らと笑っていても、心の中ではドス黒いあの子への怨みと、あの子を信じたい気持ちが渦巻いていて。

気付いてた。
きっと、彼らは気付いてた。
私がそんなことを思っていることを、薄々とだけど、気付いてた。


時折心配そうに見つめるその瞳を否定したのも、なかったことにしたのも私。


分かってる。
自分がおかしいってことは。
分かってる。
本当は彼らが私を嫌いで世間に発表しなかったわけじゃないってこと。


分かってる。
けど、赦せなかった。

私にだって、危険が伴うはずだった。
だけど、彼は私に危険なことが起こることを許さなかった。
すべてを一人で背負った。

私は彼より大人なハズなのに、気が付けば守られていて。

私を信じていないような彼らに、私の中の何かが切れた。
そんな資格なんてないハズなのに。


苦しい。光のない闇の中で一人でいるのは寂しくて、


何かに縋るように手を伸ばした。



手を伸ばしても、何もつかめやしないのに。





暗闇に一人。



 
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