私と、蜜乃ちゃんが初めて逢ったのは私が幼稚園の頃だった。

その時はまだ私も信じる心を持ってた。
純粋だった。

私が人を信じられなくなった理由は月並みなこと。誰にでもよくあることでだった。

小学生の時に、友達だと思っていた人たちに悪口を言われた。ただ、それだけ。

それだけのことで、私は人を信じられなくなった。
家族も友達も先生も、みんな、みんなが信じられなくなった。

苦しかった。
人を信じられないのは苦しくて哀しいこと。
死にたかったのも嘘じゃない。
人を信じられないくらいなら、死にたかった。
好きなのに、疑うしかなくて。愛してるのに、信じられなかった。

でも、それと同時に生きていたかったのも嘘じゃない。
信じてみたかった。受け入れたかった。

……蜜乃ちゃんはずっと私といてくれた友達だった。私が悪口を言われても一緒にいてくれた友達だった。

純粋に、彼女が好きだった時期があった。


でも、彼女が私といたのは都合がいいから。役に立つから。

蜜乃ちゃんが私に好きだと言ったのは利用するための、飼い馴らすための餌。
必要だったのは私じゃない。代わりなんていくらでもいた。

ただ容姿が良くて、自分に尽くしてくれる相手だったら誰でもよかったんだから。

それに気付いたのは殺されたあとだったけど。


帰りたい。
私を愛してくれた人たちのところで生きたい。

蜜乃ちゃん以外にも友達がいた。
でも、私は蜜乃ちゃんにくっついてばかりだった。だって、幼い頃から一緒にいてくれた友達は蜜乃ちゃんだけだったから。

きっと、みんなは私を友達として思ってくれていた。ただ、私が信じきれなかっただけ。
私を愛して、笑顔でいてくれた。
みんなは、私が人間不信だと気付いていたハズなのに。

優しい人だったのに。

なんで私は信じられなかったんだろう。


本当はもう気付いてるの。
私は、もう、あの世界には帰れない。

私は確かにここにいて、景吾くんの双子の妹として、跡部心愛として生きているんだから。

今の家族に捨てられても、いなかったことにされても、どうあがいても私は、跡部心愛なんだ。

でも、私は元の世界の人たちを裏切れない。
愛してくれたのに、愛してあげられなかった。

どんなに後悔しても、元には戻れないのに。


復讐はやらなくちゃいけない。

私は、

目を塞いで耳を塞いで息を止めて、すべてを見えないフリした。





I and she.



 
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