復讐、復讐しなくちゃ。
恐くて震える身体。
泣き叫びたい。
でも、私にそれは赦されなくて、


『ゆるさない…』


ポツリ、呟いた言葉は空気に溶け込んだ。


「あ、やっと見つけたと。」

『……ち、とせくん?』

「ん?」


憎い憎い憎い。
私が負の感情に押しつぶされそうになっているときに現れたのは千歳くんだった。


『どう、したんですか、』

「特になんもなか。ただ、会いたかっただけと。」


素でそんなことを言う千歳くんに、私は下を向く。

止めて止めて止めて止めて。
そんなこと言わないで、
私に優しくしないで、私を


『愛さないで、』


ボソリと呟いた言葉は案外響いたらしい。


「なんで、なんでそんなこと言うとっと?」

『っ、』

「……七坪になんか吹き込まれたと?」

『違います!』


ぎゅっと私の肩を掴む千歳くんが恐い、恐いの。
もう、やだ。
なんでみんな私なんかに執着するの?
私なんかほっといてよ。
優しくされると決心が鈍るの。

私はもう、あの子に復讐できるならなんにもイラナイから。

お願いお願いお願い。
私に、人を切り捨てる勇気をください。


『千歳くん…お願いだから、やめてください…』

「なんば言っとっと?俺たちから離れることは絶対に許さんばい。」


そう言う千歳くんの瞳は歪んでて、
なんでみんな狂ってるの?

やめてやめてやめてやめて

だんだんと力が抜けていって、私は千歳くんに寄りかかるように千歳くんの胸に頭を預ける。

もう、やだ、消えてしまいたい、


「あ!心愛ちゃん、こんなところにいた!」

『っっっ、』


そんなことを考えていると、どこからかあの子の声。
怒りを抑えているようだったけど、私には分かる。あの子は今すごく怒ってる。








欲しいものは勇気だけ



 
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