あれから私はマネージャーをしようとしたところ、手首の故障が激しくて重いものを持つことが出来なかった。

そんなに酷いなんて気がつかなかった。河村くんはどれだけ強く私の手首を掴んだんだろう……

それでも無理にマネージャー業をしようとしたらそれを見ていたらしい不二くんと乾くんに半ば無理矢理マネージャー業を止められた。

それにちょっとした罪悪感を持ちながらも私は重いものを持たないで済む裏の仕事に徹した。

今は、体を動かしていないとさっきのことを思い出してしまいそうで、

ただただ体を動かした。


「心愛先輩、」

『っ!…ぁ、きり、はらく、』


いきなり聞こえる声にビクリと体を震わす。
びっくりした。
一瞬だけあの人かと思って、


「?なにをそんなに怖がってるんですか?」


その言葉に少しだけ反応する。
ダメ。ばれちゃダメ。
なにがダメなのかわからなかった。
私はみんなを利用としたのに、今さらダメ、なんて。


『別に……なんでもないですよ?それより切原くんはこんなところに来ていいんですか?今は練習中では?』


にっこりと微笑みながら切原くんに穏やかにそう話す。

きっと、あの人に復讐なんて言われたから。
私が言う【復讐】とあの人の言う【復讐】はなんだか重みが違くて、
このままじゃ、不安になっただけ。
大丈夫。私があの子を怨んで恨んで憎んでる。


「まあ、そうなんスけど…。心愛先輩が心配だったんスよ。」

『っ、そ、うですか…。でも心配しないでください。それに私は今、青学のマネージャーなので。』

「…ね、心愛先輩。」


私の言葉に切原くんは笑っているのに、泣いてるような悲しいようなそんな笑みを零す。


『な、んですか?』

「俺らから離れないでくださいね。」

『、え?』

「もし、離れたら俺、俺、どうなるかわかんないッスから!」


そう言って無邪気に笑ってるはずの切原くんが私は恐くて恐くてたまらなかった。

それでも、それでも私は切原くんの気持ちを知らないフリをして笑った。

切原Side


そう言って俺の気持ちも知らずに穏やかに笑う心愛先輩がムカつく。
好きなんだ。好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで。

言葉にしても足りないくらいに俺は心愛先輩をアイシテル。
でも、それと同時に綺麗で真っ白で純粋な心愛先輩を壊したい。俺が、俺が壊したい。他の誰でもなく、俺が。

それなのに心愛先輩にはそれが届かなくて、

俺だけを頼って、俺だけに縋ってくれたらいいのに。

愛してる愛してるアイシテル愛してるアイシテル愛してるアイシテル愛してる。

例え、それが歪んでる想いだとしても。








Destruction impulse.



 
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