ギリギリと景吾くんは私の腕を引きちぎるのでは、と思うくらいに強く私の腕をつかむ。
そこは、今朝河村くんにやられたところでもあって、


『ぁ、あ、』


思わず意識が飛びそうなくらいに痛い。痛い。
死んじゃうよ。死んじゃう。
ほんとに痛くて、痛くて、
私の目からはさらにボロボロと涙が零れる。
それを見て景吾くんが手にさらに力をいれる。

ガサ

突然そんな音がして近くにあった草木が動く。すると、草木からある人物が顔を覗かせた。


「跡部、なにしてんだぁ?」

「ちっ、」

『ぁ…』


その人物の声に反応して景吾くんは私をその人物の視界に入れないかのように手を離して私の目の前に立つ。
それによって開放された私は自分の腕を震えているのに気付いてぎゅっと身を縮こませた。


「…なんで、てめぇがここにいんだ。」

「あー?もうすぐ昼休みがおわっからジローを捜してただけだっつーの。今日は俺が氷帝のマネだし。跡部こそなにしてんだよ?」


笑いながら景吾くんに言うのは私と同じマネージャーの一人、七坪上総だった。


「ちっ、わかった。とにかくてめぇは帰れ。慈郎は樺地に任せればいい。」

「…あぁ。でもよぉ、俺もだけど、そいつもじゃねぇの?そいつ…跡部心愛チャンもマネージャーだろ?」


そう言って七坪上総は景吾くんの後ろにいた私を顎で示した。

っっ、なんだろう……。なんか違和感が感じる…。

そんなことを感じながらも一刻も早く景吾くんから離れたかった私は七坪上総の言葉に賛成の意味をこめて声を出す。


『そうですね。景吾さん、どいてください。私は今、青学のマネージャーです。今がお昼休みだからといってなんにもしないのはいけません。』


私は景吾くんを突き放すように淡々と喋る。
恐かった。殺されるかと思った。
手首がズキズキと痛みを主張する。
それに顔を歪ませながらも私はにこりと笑う。


「だってよ。つかさ、跡部は心愛チャンのこと気にしすぎじゃね?……他にも目ぇ向けねぇと足元掬われるぜ?」

「なんのことだ。」

「べっつにー。じゃ、俺は行くからよ。じゃぁな!」

『ぇ…?』


そう言って七坪は私の二の腕を掴むと景吾くんから離れて行った。





I cannot understand you.



 
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