「幸村部長ー?もうそろそろお昼です…よ?」


幸村くんを呼びにきた切原くんがマネージャー室に入ってきた。
でも、私たちの姿を見たとたん固まってしまった。


「あーっ!部長なに心愛先輩泣かしてんスか!」

「赤也はちょっと黙ろうか」

「……はい」


騒ぎ始めた切原くんに幸村くんが真っ黒い笑顔で脅して黙らせる。
切原くんはそんな幸村くんを見てブルブル震えていた。


『切原くん大丈夫ですか?』

「うっす…」

「それよりもうお昼なんだよね。行こうか。」


はい…と切原くんが答えて出て行く。
私はちょっと考えたいことがあったから一人、その場に残った。


『私は変わるのかな、』


幸村くんも、手塚くんも受け入れた。
だって寂しかった。もう、一人は嫌だった。
我慢できなかったの。

ごめんなさい、ごめんなさい。
裏切らないから、忘れないから、受け入れた私を許してください。


「なんや、心愛さんやないっすか」

『っ!ざぃ、ぜんくん、?』


いきなり後ろから誰かに話しかけられた。
驚いて後ろを見ると財前くんがいた。

なんで、財前くんが…?
お昼じゃなかったの…?


「そんな警戒するように見ないでくださいよ。」

『そんなこと…』

「ないわけないっすよね」

『っ!』


財前くんはまるで私の心を見透かしたように笑う。
その笑顔にゾッとした。
それを顔に出さないように努める。
そんな私を財前くんはじっと観察するように見ていた。


「心愛さんはお昼、行かないんすか?」

『行きますよ』

「ほな、一緒に行きましょか」

『大丈夫ですよ。財前くんは先に行っていてください。』


私はにっこり笑いながら言う。


「…俺と一緒に行きたくないんすか、」

『そんなわけじゃ…』


私がそう言うと最初は私の頬に手を添える。それをだんだんと下にさげて、私の首に手を巻きつけた。
私はその間、抵抗はもちろん身動きすらできなくて、


「心愛さん、行きましょか」


それは否定の言葉を赦さなかった。





I frozen with horror.



 
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