『あの、何かあったんですか?』
幸村くんは騒ぎの中心にいた。
そこには幸村くんの他に、氷帝の人と、あの子と有澤さんが口論していてあの子は泣いていた。有澤さんはあの子を庇うように立っている。
不謹慎なのに嗤ってしまいそうになるのを必死でこらえる。
気持ちいい、気持ちいい。あの子が泣いてる。もっと泣いてしまえばいいのに。
「なんでもないよ。心愛こそどうしたの?」
私が嗤いを、こらえていると幸村くんが私からあの子を隠すように私の目の前で話しかけてきた。
『あ、幸村くんに用事があって…』
「そっか。じゃあ、あっちで話そう。」
幸村くんはそう言って私の手を握ってその場から離れた。
最後にあの子と有澤さんを見ると二人とも私を睨むように見つめていた。
幸村Side
心愛があいつらを見て嗤っているのを横目に俺をマネージャー室へ移動する。
たまに少しだけあいつらを羨ましく思う。
心愛を、笑わせることができるあいつらを。その笑いが憎しみから来る笑顔でも笑わせることができるのだから羨ましい。
心愛は俺たちに笑顔を向けることがない。例えあってもそれは偽りの笑顔だ。
それがとても悔しく思う。
欲しくて欲しくてたまらないのに心愛は俺たちを信じない。
ふと、心愛を見ると、心愛が顔を歪ませている。
無意識に心愛の手を握る力を強くしていたらしい。
それに気づきながらも無視をしてマネージャー室に向かった。
マネージャー室で二人きりになると心愛がいきなり頭を下げてきた。
『あの、私を医務室まで運んでくださったの幸村くんですよね?ありがとうございました。』
イラつく。
俺の名前を他人行儀に呼ぶその声も、人を寄せ付けないかのように話すその敬語も。
心愛と不二がキスをしていた姿を思い出す。
『幸村くん、?』
そこまで考えると、俺は心愛を押し倒していた。
心愛が驚いたように俺を見つめる。
その目を無視して俺は心愛の唇に口付けた。
He is infatuated with a girl.
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