手塚Side

俺が初めてその少女を見たのは動かない写真の中だった。


「越前、何をしている」

「っ!部長……」

「……練習にもどれ」

「…うっす」


越前は俺の一言で素直に練習に戻って行った。
ここに残ったのは涙を流している心愛と、俺だけだった。


「心愛、」

『ごめ、なさ、』


俺が話しかけると、何に謝っているのか虚ろな目をしながら心愛は謝る。


「もう、謝らなくていい」

『て、づかく、ん?』


俺がそう言って抱きしめると心愛は我に帰ったように涙に濡れるその瞳で俺を、見た。
やっと、やっと俺を見た。俺、だけ、を見た。神に見られているような、そんな、感覚に陥る。


『あ……わた、し、?』

「大丈夫だ。俺はお前の味方だ。」


何も考えないでもすらすら言葉が出てくる。
あぁ、これが俺がずっと言いたかった言葉だったのか。
神にも等しいこの、少女へ。

俺が心愛を見たのは中学一年の頃、そう跡部と初めて試合をした日だった。
試合が終わって、跡部が落とした写真の中でふわりと笑う少女。それが心愛だった。その時、俺は俺だけの神を見つけたんだ。

全てを包みこんでくれそうに暖かい光。
初めて女性に欲情した。


『やっ、』

「貴方は俺の光だ。愛してる。」

『っ―――!そんな、こと言わないで、』


そう言って俺を引き離そうとする心愛の顔にも欲情する。汚したいと思う。
堕ちた心愛もまた、美しそうだ。


「そんなこと?俺にとっては大事なことだ。」

『な、んで』

「愛してるからだ。愛しいからこそ、壊したい。」

『い……っ!』


そのまま俺は心愛を思い切り押し倒した。


『おねが、やめ、』

「今はやらない。だが、受け入れろ。俺を俺だけを見ろ。」

『っ!』


心愛は俺を畏怖するような目で見つめる。
俺にはそれがたまらなく愛しく見える。

あぁ、頷いた心愛を俺は一生手放さない。






I've never been this happy.



 
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