私はそう叫ぶと手を耳に当てて耳を塞ぐ。そしてさらに目をつぶってその場にうずくまった。


『もう止めてよ!私にはいらないんだから!私に優しくしないで!』

「心愛…」

『っ!私を抱きしめないでっ!』


仁王くんは私を包むように抱きしめてきた
私はその温もりが怖くて、そこから出ようと暴れる

そうしてると、マネージャー室の扉が開いた


「仁王、そこまでにしておけ。」

「参謀…なんじゃ。」


仁王くんはそう言いながら部屋に入ってきた柳くんを睨んだ


「精市がお前を探していてな。連れてきてやった」

「仁王?そこでなにしてるの?」

「げっ……幸村…」


柳くんの後ろからは威圧感を出した幸村くんが出てきた


「はぁ……とりあえず心愛。こっちにおいで」


幸村くんはそう言うと私に手を差し伸べた

ダメだ。この手をとったら私は、私は――――

頭の中で警報がなる
手をとったらダメだ、って

私はこの人たちがいないと生きていけなくなるって


「心愛…?」


前までの私なら絶対にその手をとることはなかった

じゃぁ今は?
怖い、怖いの。
受け入れて失うことが
愛することが


「俺は、俺たちは心愛を絶対に見捨てないよ?」

『っ!』


幸村くんはまるで私の心を読んだようにそんなことを呟く


「愛し続ける自信もあるよ。ずっと永遠に一緒にいる自信もある」


だから、だから私は―…









甘い誘惑



 
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