『あの、ありがとうございました』

「別によか。」


そう言って千歳くんは私の頭を撫でた。

一氏くんがマネージャー室から出て行くと千歳くんと二人きりになった。
私はとりあえず助けてくれた千歳くんにお礼を言う。
千歳くんは一氏くんとのことを特に聞いてきたりしなかったのでありがたかった。

それにしても千歳くんが来てくれて助かったけど、なんでここに来たんだろう…?


『千歳くんは何か用があったんじゃないんですか?』

「ん?別になんもなかと。」


?じゃぁなんで?


「近くを歩いとったら声が聞こえたけんね。だから来てみたと。」


そうだったんだ…
来てくれてよかったな。
来てくれなかったら、私きっと―――

っ!やっぱり違う!今までの私じゃなくなってる!
変わらない。私は変わりたくない!
このまま、このまま復讐するの。
それでいいんだよ。
それが、いいの。それで…


「何かあったと?俺でよかったら相談乗るばい。」


私が俯いていると、千歳くんが私の顔を覗きこんでいた。

私はそれに一言『大丈夫です』とだけ言ってマネージャー室から出ていった。


千歳くんが言った嘘には気がつかないまま―…




千歳Side


心愛がマネージャー室を出ていった。それと同時に俺はさっきまで心愛が押し倒されていたソファーに座ると嗤った。

心愛は俺が言った嘘には気付かなかったけん。俺ば疑う理由がなか。
この部屋は防音しとるばってん外に声がもれることはなかとよ?

俺はさっき心愛の頭を撫でた手を見つめるとそこにキスをした。

白石も金ちゃんも一氏も謙也も財前もみんな心愛ば好いちょるらしい。いや、きっと好いちょる。
そげんこと言ったら、この合宿所にいる奴らほぼ全員やと思うけんけど。

ばってん白石と一氏は、心愛ば襲ったけんね。
見とったよ?心愛が可愛かったたい。

心愛、心愛俺がずっと見てるけん。

早く気付くとよ………






見てるから、



 
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