私はご飯を食べた後、練習の準備をするために部屋を出てテニスコートへ向かった。

私がテニスコートへ向かっていると人の声が聞こえた。
初めは無視しようかと思ったけどあの子の声がしたので、テニスコートへ向かっていた足を声が聞こえる方へと方向転換した。

近くまで来るとバレないように息を殺して隠れた。


「ふーん…じゃぁ、あんた達も蜜乃と一緒、って訳ぇ?」

「ああ。」

「俺たちは一緒に来たんだよな!」


あれは……
有澤夏香と七坪上総?
やっぱり同じだったんだ…
でも、なんで3人が一緒にいるの?


「私が思うに跡部心愛も私たちと同じ異端者だ」

『っ――!』


違う違う違う違う違う違う違う違う違うチガウ違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違うチガウ違う違う違う違う違う違う!!!!

私は異端者じゃない!
私は私だよ!
あぁぁああ゙あ゙あ゙!
私はこの世界にいるでしょう?
生きて生きているでしょう?
いやいやいやいやいやいや!
誰か、わ、たし、を、たす、けて、?

私の頬を涙が伝う。
私はそこから完全に動けなくなっていた。

あの子たちの話も頭に入ってこない。
早く、早く逃げなくちゃいけないのに、体が動かない。


「いいよぉ?だって私もアイツはムカつくしね!」

「では、これで話はまとまったな」

「これからよろしくな!蜜乃!」

「よろしくね!上総くんに夏香ちゃん?」

「ああ。」


逃げなくなくちゃ。
逃げなくなくちゃ。

足音がだんだん近づいてくる。
頭の中では分かっているのに体が動いてくれない。


「なんや?自分らこんなところで何しとんのや?」

「「「白石/蔵!」」」


白石……?
四天の人がなんで……

そんなことを考えてると、体が何かに後ろから引っ張られた。


『ひっ』

「見つかりとおないのなら、黙っときや。」


な、に?
誰がいるの?


「もうすぐ朝飯の時間や。自分ら戻らんとみんな心配するで?」

「お前にそんなことを言われる筋合いはないが。」

「なんや?有澤さんは素直じゃないんやなぁ。荒川さんは素直やで?」

「蔵ー!俺の心配はねぇーのかよ!」

「はいはい。はよ食堂行きぃや。」


白石がそう言うと3人はすぐに食堂に戻ったらしい。

私の体を抱きしめている人はまだ離れない。


「なんや。謙也まだ抱きしめとんのか。はよ離しい。」

「うっさいわ!」


白石がそう言うと、忍足謙也はやっと私から離れた。


『あの、どこから聞いていましたか?』


異端者などが聞こえていたら、この人たちはきっと私を不審な目で見る。
それに、あの子への復讐が出来なくなるかもしれない。

私が白石と忍足謙也の目をじっと見ながら聞くと、白石は口をにやりと弧の形にしたかと思うと、私の体をどんっと壁に押し付けて耳元で優しく甘く囁いた。

まるで、恋人にするかのように。


『いっ!』

「なぁんも聞いてへんで?心愛ちゃん」

『っ――!』


思い切り壁に打ち付けられた私は顔が歪む。
白石はそんな私の様子にさらに笑みを深めると、私の口を白石のそれで押さえつけた。


『んっ!?―――ふぁっんぁ』

「――はぁっ!なんや、色っぽいな。」


白石は数十秒ぐらい私の口を弄ぶと満足したのか、やっと離した。

私はすぐにそこから離れると唇をこすりながら、そこから逃げだした。










私は、



 
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