「心愛…」

『―――っ!』


跡部景吾は部屋に入ると同時に私を抱き締めてきた


『なん、で私を、だきし、めるんで、すか、』

「…逆に聞く。なんで兄が妹を抱き締めちゃいけねぇんだ」


兄……?
跡部景吾が私の兄…?


『っ!今さらです!私を世間に発表しないで、いないものとして扱ったくせに!私を愛してなんてないくらい分かってます!私のことはほっといてください!』


そのまま自分の体を抱き締めていた跡部景吾の体を力任せに振りほどくと、跡部景吾の部屋を出ていった。


『―――っ!なん、で、いま、さら…』


私は震えている自分の体を抱き締めながら元来た道を戻って幸村精市に自分の部屋を聞きに行った。




跡部Side

「……やっぱり心愛は勘違いしてるか……」

部屋にあるソファーに座って呟く。


心愛は俺様たちの家族にとってすごく大事な存在だ。

父様や母様だって俺様より心愛の方を大事に思ってる。

そのことに関しては俺様だって心愛の方が大事だから特に何も思わなかった。

イギリスにいる時はよかった。
心愛も本当の笑顔で笑うことが多かった。
俺様が好意の気持ちを示すと困っているようだったが半分は受け入れていた。

しかし、心愛は日本に来る前に知ってしまった。


自分が世間に発表されていないということを。


俺様の家は財閥だ。
金持ちの家に生まれるということは、色々なヤツらから狙われる。
だから、父様と母様は俺様が六歳になるまでは世間に発表しなかった。

でも、心愛は違った。

父様と母様は本当に心愛を大事にしている。
だから、心愛だけは周囲に発表しないで俺様たちだけの心愛として育てられた。

俺様たちは本当に心愛が大切だった。

でも、心愛は愛されてないから世間に発表されなかったと思っているらしい。
自分が愛されてないと思った心愛は、俺様たちに何も言わず日本に来ると同時に姿を消した。

いなくなった後、俺様たちも必死に探したが心愛は見つからなかった。

でも、この合宿の前になっていきなり心愛の個人情報が出たらしい。

やっと、やっと見つけた俺様の半身なんだ。
俺様たち家族の大事な宝なんだ。
なんとしても、この合宿中にはすべてを解決させる…!


それにしても…

「心愛は荒川が嫌いみたいだな」

俺様は荒川が悔しそうにしている顔をみて嗤っていた心愛の顔を思い出して、

嗤った








嗤う嗤う



 
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