合宿まであと2日――

氷帝Side

「―…、はい、わかりました」ピッ

「ん?なんや跡部嬉しそうな顔してんな」


氷帝テニス部の部室で跡部は妖しく笑っていた
その様子に気付いた忍足は疑問に思ってその笑顔のわけを聞く


「そんなに顔にでてるか?」

「おん。ごっつ嬉しそうやで」


その言葉を聞いて跡部は我慢が出来なくなったかのように手を顔に当て大笑いし始めた


「くっ…はーっはっはっは!!」

「うわっ跡部気持ちわるっ」

「がっくん、ホントのことでも言っちゃダメだよ!しーっ!」

「慈郎が一番失礼じゃねぇか?」

「てか、珍しいな。慈郎が起きてんの」


跡部が笑い始めると、向日、芥川、宍戸の順で話し始めた


「俺だってたまには起きてるC!」

「ホントにたまにだな」

「で、そこの先輩方はほっといて、なんで跡部さんは(気持ち悪いくらいの笑顔で)笑っていたんですか?」

「日吉!先輩に失礼だよ!」


再度跡部に質問を投げ掛けるのは日吉。
そして、その日吉を咎める鳳


「ふっ……今日の俺様は機嫌がいいからな。教えてやるよ」

「で、なんでなんや?」

「俺様の妹が見つかったんだよ」


跡部がそう言うと、他のR陣は目を丸くして驚いた


「跡部って妹いたのか?」

「あっ俺知ってるC!跡部が持ってる写真の女の子じゃない?」

「はっ!慈郎にしては察しがいいじゃねぇか」

「その跡部の妹っちゅーやつは何処にいたんや?」

「立海だ。立海のテニス部のマネージャーになってた」


跡部が答えると、みんなはさらに驚いた様子だった


「立海といえば、荒川先輩がいるところじゃないですか!」

「あぁ、そうだな。いっとくが俺様はあの女より心愛をとる。最初からあの女は心愛の代わりだったしな」


その言葉に部室にいたR陣は静かになった


「なんや、気づいとったんか」

「アーン?当たり前だろ?俺様をなんだと思ってやがる」

「え?どういうことですか?」


跡部が忍足の言葉に答えると、ただ一人意味が分からなかった鳳が疑問の声をあげた


「なんだ長太郎分からなかったのか?激ダサだぜ」

「鳳は本当に知らなかったのか……」

「えっ?ちょっと日吉どういうこと?」

「はぁ……荒川蜜乃はただのミーハーだ」


日吉の言葉に鳳以外のR陣は同意するように頷いた


「…え?じゃあ、なんで先輩たちはみんな荒川先輩に惚れてるみたいだったんですか?」

「ただの遊びだ。あの女が転校することは知ってたからな。」

「それにアイツムカつくんだぜ!俺たちと仲良かった女子苛めて俺たちに関わんないように脅してよ!」


向日がそう言うと、そのことを知らなかった芥川と宍戸、鳳が驚きの声をあげた


「そうだったの!?」

「知らなかったぜ…」

「気がつきませんでした…」


三人が落ち込んでいるのを無視して跡部は話し始めた


「とにかく、俺様は合宿ではテニスはもちろん心愛が一番大事だ。てめぇら、くれぐれも心愛に手を出すんじゃねぇぞ。行くぞ樺地」

「ウス」


跡部はドスの効いた声で言うと、樺地と一緒に部室を出て行った


「なんや跡部がそない執着しとるの初めて見たわ」

「なー。跡部がそこまでムキになるの珍しいよな」

「てかよ、初めてじゃねぇか?」

「先輩方も初めてなんですか…」

「そういえば芥川さんは、跡部さんの妹見たことがあるんですよね?どうでした?」


日吉の言葉にR陣は一斉に芥川に視線を移した


「んー…欲しくなる、って感じだったよ」


そう言って芥川はただ妖しい笑みを浮かべた―……






欲しいもの



 
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