幸村Side


あ、赤也があの女にキレた。

俺は赤也が赤目になっていくのをぼんやりと傍観しながら初めて心愛と会った時のことを思い出していた。


俺が、いや俺たちが心愛を見たのは中学二年の春頃だった

ちょうどクラス替えの紙が張り出されて、多くの人が自分のクラスをこぞって見に行く中、心愛だけは一番後ろの方でみんながいなくなるのを待っていた

その時の心愛は、桜が舞っている光景にとてもよく映えていて俺は一目見て欲しくなったんだ

これは一目惚れなんて綺麗な気持ちじゃないんだ

もっとドロドロしてる汚いものだ


心愛は何故か自分から進んで一人になっていく子だった。

周りの人が話しかけようとしても、アイスブルーの瞳でみんなを畏怖させていた

まあ、それは俺たちに好都合だっけど


俺はとにかく、心愛が欲しくて欲しくてたまらなかった

手に入らないなら壊してしまいたいくらいに


だから俺たちは心愛をテニス部マネージャーにすることにした


もし断ったらどうしようかと思ったけど、何か考える素振りをしたあと心愛は快くマネージャーを引き受けてくれた


いままで、なぜ心愛がマネージャーになったか不思議だったけど、それはきっとあの女のためなのだろう

あぁ、なんかそう考えるとすごく嫉妬するな


そこまで、考えていると心愛がやってきた


『幸村くん。私を呼んでいたそうですが、なにか不備でもありましたか?』

「あぁ心愛か。ちょうどいいや。赤也が半分赤目になってるから頼めるかい?」


そう言ってあの女と赤也に目を向ける振りしながら心愛を見る


心愛は笑っていた

いや、正確には笑いを堪えていたかな?


これで心愛が何をしたいのかはわかった

それなら、俺たちは心愛の望む通りに動いて信じてもらわないとね


きっと心愛は俺たちを、いや人間の愛や信頼を信じてない

それなら、俺たちを信じさせたらもう心愛は俺たちから離れていかない。いや離れていけない


その為なら俺たちはなんでもしてやるさ


これが歪んでいたって構わない

心愛に気付かせなければいいのだから








手に入れる為ならば



 
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