次の日に夏目は何食わぬ顔で来た。寒くなってきたな、そう呟く彼に生返事を返す。昨日のことが頭から離れなかった。私は結局夏目のことを何もしらない。しっていることは名と顔と細い身体と手と彼の匂いだけだ。それだけで十分だったはずなのに、日に日に貪欲になっていく。そしてしらない自分に腹が立って醜かった。

突如温かいものが首筋に当てられて奇妙な声をあげてしまった。それを楽しそうに笑う夏目。楽しそうだが時折影が顔を出している。

「な、何」
「おしるこ。何も返事しないから」
「おしるこ…」
「甘くて温まるんだぞ」

おしるこは本当に甘くて身体の芯がぽかぽかになった。ゆっくりと脳内にも染み渡り、自分の考えがまとまりやすくなった。私はやはり夏目のことがしりたい。最近彼に散らつく影は何なのか。

「ねえ」
「ん」
「もうここに来れなくなるの」
「…どうして」
「だからそんなにつらそうなの」
「…」
「夏目にとってこの時間は大切だったのかな。つらいと感じてくれるほど少しは大切だったの、?」
「…当たり前だろ」
「そう、」

ぽろぽろとこぼれる涙がとまらなくて手のひらじゃ収まることができなくて。夏目、夏目。寂しい。こんな気持ちになるのならあなたに話しかけなければよかった。ずっとひとりでよかった。ねえ、夏目。私ね、あなたが好きなのよ。初めての恋なのよ。

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