五日間は一瞬に感じた。わたしの生きてきた時間に比べれば本当に一瞬。

何かを伝えたかった。けれど私の文字は夏目には伝わらないし、言葉のような消えるものでは嫌だった。その旨を恋を教えてくれた者に相談すると、解決策を教えてくれた。その日私は彼に渡すべきものを必死に探した。と言ってもベンチから動けないのでその場で待つしかないのだが。ようやく見つけた頃にはもう夕日も落ちていた。最後の日なのに、夏目は来ないのか。久しぶりの程良い疲れに瞼が落ちる。心地良い微睡みの中に優しい彼の声が聴こえる。私の名を呼ぶ。

「おいっ」
「…来たのね」
「来ないほうが良かったか」
「ふふ、会えて嬉しい」

でももう暗い。彼は帰らなくてはいけない。

「夏目」
「ん?」
「これをあげる」

私が渡したのは紅葉で。恋を表すかたちを聞いた私はそのかたちを探した。それはハートというらしい。それで自分の気持ちが彼に伝わるかはわからないが、でも、これしか方法がないように思えた。愛を伝えれば優しい彼の重荷になりそうな気がして。

「夏目、お元気で」
「…ああ」

ハートはたくさんの心のかたちを表す。私の気持ちをどうとったかわからない。

恋というものを教えてくれた。優しい気持ちを、温かい気持ちを、切ない気持ちを、醜い気持ちを教えてくれた。ありがとう夏目。これからはたくさんの人とであって、恋をして、ひとを包んで、ひとに包まれて、穏やかに生きてほしい。優しくて温かい君はしあわせになって。そう願わずにはいられないよ。



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