性格重視とか言うひともいるけれど、やっぱり第一印象が決まる顔は大事だと思う。男だらけの星月学園に入学したわたしは初めて彼を見たときに驚愕した。だって、この世にこんなに素敵な、わたし好みの男のひとがいるなんて。神さまなんて信じたことなかったけれど、この時、本当にいるのかもって。そう思った。

なんとまあ。奇跡は続いて起こるもので、学科も一緒だった。席もとなり、なんてそこまでうまくはできてなかったけれど、まあ、良しとしよう。彼の斜め斜め後ろだから勉強している横顔を見つめることができて、幸せ。部活は中学からやっていた弓道部に決めていた。優しくて少し腹黒な部長に、今時珍しい硬派で武士みたいな副部長。部を盛り上げてくれる犬飼先輩と白鳥先輩、小熊くん。そして紅一点のわたしの憧れ、月子先輩。みんなみんな優しくて、インターハイ優勝という目標のもと、練習に励むこの弓道部が、すぐに大好きになった。

六月になって、なんと彼が入部することになった。入学式以来の衝撃がビビビと走ってきて、正直倒れるんじゃないかってくらい、めまいがした。だってだって。うまくいきすぎでしょう。中学時代の友人に連絡すると、うまくいくときはずっと、うまくいくみたいだ。なるほど。

学年も学科も部活も、すべて一緒のわたしと彼は、仲良くなっていった。初めての会話は教室で話しかけられた時だった。「部活行くでしょ?」ぐわんぐわんと首を縦に振るわたしに苦笑していたなあ。体育祭は二人三脚を一緒にしたし。最初に感じたどきどきとは違ったものが最近のわたしにはある。きっとこれが恋なのかな、とか、思ったり。顔だけだった彼が、わたしのなかでニョキニョキと成長して身体が生えて話すようになった。アイドルから身近なひとになった。

男子団体戦、月子先輩がインターハイを優勝して、決めていたことを決行した。彼を呼び出してからの告白。前々から月子先輩が背中を押してくださってたけれど、臆病者のわたしは何かのイベントにこじつけないと言えなかった。それがこのインターハイ優勝。呼び出して彼がこっちにくる時はわたしの心臓はパンク寸前だった。いざ言おうと思ったら、彼の綺麗な人指し指が彼のくちびるに当てられて。意味がわからないままに、先に彼から告げられた。わあわあわあ。少女漫画みたいなこんな展開って本当にあるのね。わたしもヒロインみたいにぼろぼろと涙をこぼしてしまったのである。

それからは特に大きな喧嘩もなく、幸せな日々を送っていくはずだった。まあそんなにうまくはいかない。神さまはやっぱりいなかった説に変更したくらい。あ、やっぱりいて、意地悪というか現実の厳しさを突きつけてきたのかもしれない。結論から言うと、わたしと彼は別れました。でもお互い想い合っています。今のところ。なぜ別れたのかというと、わたしと梓くんは義兄妹になったからなのです。おとなの事情です。寮出た後が大変だねって、結婚できないねって、話してたけど、戸籍上認められないわたしたちに未来はないのでしょうか、神さま。

  
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -