時計を見たら1時を過ぎていた。あいつ寝てるだろうなあ。明日も日向くんと早朝練習するのかなあ。バレーの次だとわかっていて付き合っているけれど、涼しい風が吹くこの秋は少しだけ寂しい。声、聴きたいなあ。

ディスプレイに彼の電話番号が表示されるのは本当に久々な気がする。いつもはメールで用は済んでしまうし、学校で会えば話せるのだから電話は何か申し訳ないし。ぐだぐだぐだぐだ考えているうちに2時を迎えようとしていた。私も明日朝練行くのに。やばいなあ。でも胸がざわざわして気持ち悪い。

ええい。通話ボタンを押す。二回、いや三回コールしたら切ろう。どうせ明日の朝に会えるし、うん。

プルルルル。プルルルル。プルルルル。出ないよね、寝てるよね。切ろうとした時に不機嫌丸出しな声が聴こえた。

「えっ」
「お前まじ何時だと思ってんだ」
「えっ2時、です」
「だよな。お前時間わかるんだよな。俺朝練あるんだよ知ってるだろ」
「うん、知って、ます」
「明日来ねぇの」
「朝練?もちろん行くけど…」
「じゃ早く寝ろよボケ」
「ごめん…」
「で、何だよ」
「何が、」
「お前普段電話とかしないだろ。何かあった」
「いや、べつに、ちょっと」
「ちょっと?」
「飛雄くんの声、聴きたいなあとか」

「はあ?」
「ごめん、本当、それだけで」
「毎日聞いてんだろ」
「うん…」
「しかも中学からだぞ」
「ですね、」
「まじ俺寝るわ」
「うん、おやすみ」
「明日寝坊すんなよ」

「あと電話かけんならもっと早い時間にしろよ」
「たまには飛雄くんから…」
「バーカ」

じゃあな。ぶつりと切れたけれど飛雄くんの声が聴けて気持ち悪さが温かいものに変わっていった。ごめん飛雄くん。私起こして良かったって思っちゃった。明日の朝練は潔子さんより早く行こう。深呼吸での秋の匂いに、もう寂しさはなくなっていた。

  
「#幼馴染」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -