「なまえ、餅焼くけど何個食う?」

台所から聞こえてきた声に顔を上げると、シカマルが切り餅が入っている袋を手に持ちながらこっちを見ていた。つまらないお正月の特番をだらだらと見ていた私はちらりと時計に目をやる。ああ、もうお昼時なんだ。時計の針はちょうど一時を指そうとしていた。

「四個」
「はあ?」
「え、駄目?」
「駄目っつーかそれは多くないか」
「お腹空いてんだもん」
「…いいけど、何餅にすんの」
「全部納豆餅がいい」
「じゃあ冷蔵庫から納豆出して」
「え」
「何だよその顔。まさか俺にやらせる気じゃねえだろうな、納豆くらい自分でまぜろ」
「……」

呆れた顔をして私を一瞥した彼はすぐに台所に引っ込んでしまう。しぶしぶこたつからはい出た私はシカマルのいる台所に向かった。そういえば、シカマル髪おろしてたなあ、めずらしい。

「あのさ、」
「ううん?」

ぐるぐると箸を動かして納豆をまぜる私のほうを見ずに、シカマルがぼそりとつぶやく。トースターの中の餅の具合を覗き込みながら、彼はこう続けた。

「切り餅一個分って、白飯一杯分のカロリーらしい」
「…は?」
「だからさ。おまえが今四個餅を食うとして、それは白飯四杯お代わりしたと同じことになるっつーわけ」
「……」
「俺の言いたいこと、わかんねえ?」

に、と悪戯に口角を上げた彼に私は絶句した。そんな、お餅ひとつでご飯一杯分だなんて。知らなかったにしても、今までの所業が走馬灯のように頭の中で駆け巡って気が滅入ってしまうそうだ。平気で三個も四個も食べていたお餅がそんな高カロリーな食べ物だったとは。

「な、なんではやく教えてくれなかったの!」

ばか!とシカマルの背中を叩こうとすれば、彼はそれをひょいとかわして取り乱す私を心底可笑しそうに笑った。

「こないだいのから聞いたんだよ、俺だって知らなかった」
「ふ、ふと、る…」
「いんじゃん、おまえちょっとやせすぎだし」
「よくない!」
「…あ、そー」

ああもうどうしよう、これは大幅なダイエットが必要かもしれない。いや、絶対必要。今まで食べてきたお餅の数をかぞえるのは、恐ろしすぎてできそうにない。

「どうすんの、これ」
「え」
「今焼いてる餅」

慌てふためく私を余所に、シカマルはトースターを指さしていぶかしげにこちらを見つめている。いるか、そんなもん!

「いらないっ」
「俺もいらん」
「シカマルが食べて」
「…少しくらい太ったほうが俺はいいんだけど」
「はあ?」

何その発言ありえない!そう言い返そうとして振り向いたら、抱きしめられていた。え、な、なんで。

「そのほうが抱きごこちいいだろ、」

なんて恥ずかしいことを言うんですか、あんたは。





(ほんと、可愛いやつ、)



おまけ
(あっ、あほか、変態)(うっせー、のわりには顔赤いんじゃねえの)(あかくないっ)(あー、はいはい)


10'0103
お餅1つ=ご飯一杯分らしい


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