St.Valentine's Day
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木の葉の里で一番人気のチョコ店“コディハ”

その店は本日、ちょっとざわついていた。
ただでさえ混雑する店なのに、バレンタイン前なら尚更。
その女の子達に混ざり、一人男子がチョコを選んでいた。
顔の半分を口布で覆い、額宛てを斜めにかけた、白銀の髪をした少年。


「カカシッ!? 何でここにいるの?」

「リン。何でって、チョコ買いに来た」


きょとんとした、と言っても、目だけで判断するしかないのだが、答えるカカシ。


「そりゃそうだろうけど、なんで?」

「何でって、明日バレンタインでしょ? オレ、明日任務入ってるから、報告書提出がてら渡しにいこうと思って」

「あの、バレンタインの意味、知ってる?」

「もちろん。お世話になった人に感謝する日でしょ?」


その言葉を聞いて、店にいた女の子全員力が抜けた。



「ちょっと、リン!」

小声でリンの肩を叩く者がいた。振り返れば、同期のアンコと紅が呆れてカカシを見ていた。

「誰よ? カカシにあんな事教えたの?」

「さあ…?」


3人が改めてカカシを見ると、カカシはチョコを買い終えた所であった。


「カカシ、それ教えたの誰?」


恐る恐る聞いてみれば、「センセだよ」と返ってきた。

「え?」
「だから、センセが言ってたんだよ。毎年貰うのは、感謝のチョコだって」


「あんたはそれ、信じたんだ…」


アンコが頭が痛いと言わんばかりに、こめかみを押えた。


「リン、あんたちゃんと教えときなさいよ」
「う、うん…」


リンは気が重くなりながらもカカシと一緒に店を出ようとすると、ちょうど店に入って来た客が躓き、リンとぶつかりそうになった。
咄嗟にカカシはリンを左手で庇い、倒れそうになっている客を右手で支えた。

「あ、ありがとうございます…」

倒れそうになった客は、恥ずかしさからか頬を赤らめ、礼を述べた。


カカシの腕に抱き抱えられる形になったリンもまた、赤い顔をしている。


「ありがと、カカシ」
「どう致しまして。怪我はない?」
「うん、大丈夫」

「そう、良かった。あ、はい、これリンに」
「…え…」

「バレンタインチョコ。リンにもお世話になってるしね。感謝の印」



「……ありがとう…」

受け取るリンは複雑な表情を見せた。




四代目の所へ行くというカカシについて、リンもまた一緒に火影邸へと向かった。



ノックをしようと手を上げれば、
「カカシでしょ。入っておいで」
と、先に中から声がかかった。


失礼しますと入れば、ニコニコと嬉しそうに微笑んでいる四代目に迎えられた。

「わ〜、リン。久し振りだね」
「…お久しぶりです、四代目火影様」


心なしか幾分リンの声が低くなっている。


「カカシ、私四代目と話があるの。席外してくれないかしら?」
「…分かった」
「あ、それなら隣の仮眠室にいて。明日のこともあるし」


カカシは些か戸惑いつつ、隣室に下がる。



「…先生…」

ますます低くなるリンの声。

「な、なに?」


その声に不穏なものを感じ、笑顔が引きつる。


「先生、なんでカカシにバレンタインは感謝の日なんて教えたんですか…。カカシってば、それ信じてチョコ買いに来てたんですよ?」


「え? オレ、そんなこと教えた覚えないよ?」

「だって、現に私チョコ渡されたんですよ? いつもお世話になってるからって。もう、カカシに渡せないじゃないですか…」


最後の方は涙声になっていた。慌てる四代目。


「わ、わ、泣かないでリン。カカシにはちゃんと説明しておくから!」


カカシには、仲間以上には思われていなかった事にショックを隠し切れないリン。
それをなんとか宥め、帰宅させた。





「カカシ、リン、ショック受けてたよ?」

「そうですか…」


「ねぇ、バレンタインの意味、知らないの?」
「やだなあ、センセ。知ってますよ、それくらい」
「感謝の日じゃないよ?」
「好きな人に愛を告白する日でしょ?」
「ちゃんと判ってるのに、なんで感謝の日なんて言ったの?」


「だって、そう言わないと恥ずかしくて…」

これ、と言って差し出す紙袋。


「これは、カカシからの愛の告白ととっていいのかな?」

「…お好きなように」


幾分頬を染めながら答えるカカシ。

そんなカカシを抱き寄せて、そっと唇を重ねた。


「センセッ! オレ、明日任務…」

「うん、オレの手伝いね」

「え?」


そのまま唇を重ね、お互いの身体に腕を廻す。

そうして二人は愛を確かめ合うのだった。




end.
08.02.10






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