傍にいて
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カタンと小さな音に誘われるように、半分微睡みから覚める。
するりと手を延ばせば、いつもある筈の温もりはなく、ただ冷たいシーツの上を滑っていくだけだった。

不思議に思い目を開けてみれば、隣で寝ている筈のカカシの姿は既になく、タンスの前で着替えていた。
シャワーでも浴びてきたのか、銀色の髪からポタリと雫が落ちて、白い背中を伝い流れていく。


華奢な身体からすらりと伸びた細い四肢。顔のラインも丸みが取れ、シャープさを備えてきた。


幼い子どもの衣を脱ぎ捨て、大人の衣を身に纏い始めたカカシ。
少年から大人へと変わり始める、そのまだ丸みの残る身体にも、大人の鋭さが見え隠れし、その絶妙なアンバランスさが妙に色気を醸し出している。


白い肌には紅い花がいくつも散りばめられ、一つ一つの紅い痕を見てはカカシの淫れた姿を思い出し、ツクンと中心に熱が集まるのが分かった。



じっと見つめられているのに気付いたのだろう、怪訝な顔をして振り返った。


「何をそんなに見てるの?」

「いや〜、大きくなったなぁと思ってね」
「何言ってんの。毎日見てるのに」

「うん、そうなんだけどね。こうして見てるとさ、小さい頃を思い出してね」
「………」

「とーしゃん≠ネんて言ってた頃が懐かしいね」

子どもの頃を言われ、少し不機嫌になるカカシ。


「あの頃は、こんな関係になるとは夢にも思わなかったけどね」

そう言うと、カカシは途端に顔を赤くした。「おいで」と呼べば、素直にやってくる。
優しく抱き締めれば、そっと背中に腕が廻された。



「センセ…」
「ん?」
「オレはまだガキだけど…」




「オレ…もっと大きくなる。そして、もっともっと強くなる。…強くなって…センセの横に並べるくらい強くなるから…だから…」



「カカシは今でも充分強いよ」


そう言うと、カカシは顔を上げて強く反論してきた。その瞳は恐ろしく真剣そのものだ。


「今のままじゃ全然駄目だ。センセの横に並び立てない。オレはセンセの背中を守れるくらい…センセが背中を任せられるくらい強くなりたい」



子どもの成長はなんて早いんだろうと思う。
初めて会った時、別れが寂しくて涙を流していたのに、今はオレと並びたいと、オレを守りたいと願う程になった。
この鮮やかに成長していくカカシに、オレは、オレの全てを与えてやりたい。カカシの為ならこの命すら惜しくはない。

オレはカカシを抱く腕に力を込めた。


「ん、ありがと、カカシ。お前が強くなるのを期待して待ってるよ。オレの背中を任せられるのは、カカシしか居ないからね」


カカシはコクンと頷いてオレの胸に顔を埋め、ギュッとしがみついてきた。





「ねぇ、何で早起きしたの?」


「あ〜、…今日はセンセの誕生日だから…。プレゼント用意出来なかったから、せめて食事でもと思って…」

「え? 今日?…あ、ああそうか。ん、じゃあ、カカシ。オレ、プレゼント欲しいな」

「何がいい?」
「ん、カカシ!」


素直に一番欲しいものを言ってみた。
カカシの顔がみるみる赤く染まっていく。


「ムリです…」
「何で!?」


「…だって…もうすでにオレはセンセのものだから…」

ああ、なんて可愛いことを言ってくれるんだ!


「ん、それでも…今はカカシが欲しい…」



そう言えば、カカシは恥ずかしそうに身じろいだ。
けれど、腕の中から逃げることはせず、与えられる愛撫に素直に身を任せる。淫れるカカシの愛しさ。





子どもの成長は早い。

いつの日か、別れの時が来るかもしれない。そんな漠然とした不安に襲われる。


離れたくない、離したくない。

そんな想いで抱いていたら、些か乱暴だったのだろう。カカシがオレの頬に手をそっと延ばしてきた。


「センセ…どうしたの?」


オレはにっこりと微笑んで、不安を払拭するかのように囁いた。


「ずっと、傍にいるよ…死ぬ時まで…」


「あ…やだ…」

「え?」


「オレ…は、死んでも…センセの傍にいる…」



ああ、カカシ!お前はなんて…!


「ありがとう、カカシ。そうだね…死んでも傍にいてね」




そうだね、そうだねカカシ。
オレだってずっと死んでも離さないって想ってきたけど、お前も同じ想いでいてくれたんだね。

こんなに嬉しいことはないよ。


なんて素晴らしいプレゼントだろう!




ありがとう。
お前はオレの最高の恋人だよ!





end.
08.01.27






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