恋 孤悲
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大晦日、オレは任務を終え里に帰って来た。
けれど、里に入る気になれず、大門の前の木に座って、そこから見える月明りに照らされた火影岩を眺めていた。

ここから見る火影岩は遠く、誰が彫られているか判別出来ないが、里の者なら誰だか聞くまでもない。

一番右に彫られた、実物よりちょっと落ちる四代目の顔。
本物と比べていたら、鐘が鳴り出した。除夜の鐘。


それに、じっと耳を傾けるカカシ。




煩悩を振り払う鐘。




去年は四代目に就任する前で、二人で聞いた。今年は一人でこっそり隠れるようにして聞いている。



里に入りたくない理由はただ一つ。

四代目──センセはきっと女の所だと思うから。

そこで、二人で鐘の音を聞いて蕎麦でも食べているのではないか…。
そんな事を想像したら、途端帰りたくなくなった。


煩悩を払う鐘の音。なのに、煩悩はますます深まるばかり。


大きく溜息を吐いて最後まで聞いていたら、すっかり身体が冷えてしまった。

今行けば、火影室には誰もいないだろう。
こっそり報告書を出して帰ろう。



そう決意し、冷えきった身体を動かして誰もいない火影室へと向かった。





着いてみれば、四代目が黙々と仕事をしていた。
驚きのあまり、入口に立ったまま四代目を擬視してしまった。


「おかえり、カカシ。どうしたの? そんな所に立ってないで入っておいで」


笑顔に促され、重く感じる足をようやく動かして机の前まで進んだ。


報告書を出せば、「お疲れ様」と労いの言葉と共に、頬に四代目の手が添えられた。

冷えきった身体には、燃えるように熱く感じる四代目の手。


「冷えきってるじゃない! このままじゃ風邪ひいちゃうよ。お風呂に入って、温まっておいで!」


言うやいなや、カカシを抱き寄せるとそのまま浴室へと向かい、カカシから服をはぎ取り、浴槽の中へ無理矢理入れてしまった。


「よーく温まるんだよ。いいね?」


コクンと一つ頷いて、肩まで湯に浸かった。
少しぬるめの湯なのだが、冷えきった身体にはかなり熱く思えた。しかし、直ぐに出てしまえば四代目は心配するし、おまけに自分はガチガチと歯がかみ合わないのだ。

今日ばかりは、おとなしく四代目のいうことをきいた。



温かい湯に、強張っていた筋肉もほぐれていく。青白かった頬にも赤みがさし、ほかほかと芯から温まって浴室を出た。


気配を察したのか、四代目が来て、拭いていたタオルを取り上げ、自ら拭いてくれる。

拭き終わるやいなや抱き締められ、そのまま寝室へと連れて行かれ、肌を重ねた。



四代目の愛撫は蕩ける程に甘く、熱かった。
そして、自分の中を掻き回す肉棒は太く熱く、カカシを翻弄した。


自分を穿つものが苦しくて堪らない。
それが、排泄器官を性器として使っているからなのか、心がついていかないせいなのか判らない。


身体はこんなにも快感に喜んでいる。
なのに、心は冷えているのだ。






──満たされない




そう、心は不満なのだ。四代目が自分だけのものではないから。



以前は信じていたのだ。四代目の心は自分だけのものだと。

けれど、知ってしまった。四代目に女がいることを。




それからだ。それから常に心は満たされない。
どこか欠けてしまって、冷たい風が吹き抜けていく。


求めて、掴んだと思っても、するりと自分の横をすり抜けていく。


欲しくて堪らない。自分だけのものにしたくて堪らない。
求めて、求めて──







「あ…ぁあ…もっと…」



「セ、ンセ…もっと…」






「ちょうだい…センセ…全部…」









「ん…あげるよ。カカシに…オレを全部…」









end.
08.01.04






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