子ども扱い1P/1P
人の声などかき消すように雷鳴が轟いている。それに負けじと、雨までもが強く叩き付けるように降っている。
そんな中で修行をしていたカカシは、四代目に見つかり、二人でずぶ濡れになりながら帰ってきてシャワーを浴びているところだ。
途中、散々怒られたのは言うまでもない。
わしゃわしゃと髪を洗われながら、困ったもんだとカカシは思う。
この四代目は、すぐ自分を子ども扱いしたがる。いくら自分がもう子どもじゃないと言っても、笑って流すだけだ。
思わずため息が漏れてしまう。
「ん? どうした? 疲れた?」
そのため息を耳にした四代目が心配して聞いてくる。
「別に……」
「あ、何? その素っ気無い言い方。さっき怒られたの、気にしてるの?」
「…違います」
言葉遣いが敬語になると、四代目は途端に文句を言ってくる。
二人だけの時は、砕けた物言いをしないと機嫌が悪い。
文句が出る前に言葉を繋ぐ。
「センセはすぐオレを甘やかす…」
「えー、だって、カカシを甘やかせる事が出来るの、オレしかいないんだよ?」
「へ?」
「オレだけが、カカシを甘やかすことが出来るんだよ? だから、いいんだよ」
背中を四代目に洗ってもらっているから、四代目がどんな顔をしているか定かではないが、きっとニコニコと笑っているのだろう。
泡を流し、二人してゆったりと湯船に浸かる。
長年の習慣で、そういう時は四代目の膝に座るのだが、小さい時はそれでよかったが、大きくなってからは、四代目の脚の間に座り、凭れかかるかたちになる。
それさえ、今より少し前の方が良かったかもしれない。
今は凄く居心地が悪い。なんといっても、当たるのだ、腰に。
四代目の硬くなったアレが…。
四代目が欲情している。
そう思っただけで、自分の中心も熱くなってくる。そうなると、とても恥ずかしい。
簡単に反応してしまう自分が。
「ね…センセ…」
「ん? 何?」
「欲情をコントロールって、出来るのかな?」
「出来るよ」
「ホントッ?」
「ん。まあ、訓練が必要だけどね。でも今は必要ないでしょ?」
「そんなことないです…」
「何で?」
「な…なんでって…」
「恋人に欲情するのは当たり前でしょ? 隠す必要ないじゃない」
「恋人?」
今まで散々自分のことを子ども扱いしてきた四代目。
彼の中で、自分はいつまで経っても小さな子どもにすぎないのだと思っていた。
身体を重ねるようになっても、それは変わらなかったから。
彼がそのように、恋人と自分を位置付けているのには少し驚いた。
そんな風に思ってくれているとは、思っていなかったのだ。
「オレとカカシは恋人でしょ? それとも、そう思っていたのはオレだけなの?」
恋人? と聞き返されたことで、少なからずショックを受けているようだ。
「ううん…うん…」
「どっちなのさ」
「どっちって…オレ…恋人になりたいって思ってた」
「なりたいって… オレ達、想いを打ち明けあって、一つになったんだよね? なのに何でなりたい≠ネの?」
「だって… センセってば、いつまで経ってもオレを子ども扱いするし…」
「それは、さっきも言ったけど、カカシを甘やかせる事が出来るのはオレだけなの。それに加えてカカシは可愛いし、恋人としても甘やかしてあげたいじゃない。甘えても欲しいしね」
そんな風に思っていたなんて知らなかった。
カカシは自分の頬が赤くなっていくのが分かった。
四代目が自分を子ども扱いするのは、単に自分が子どもだというだけではなかった。
恋人≠ニして甘やかしてもいたのだ。
そのことがたまらなく嬉しい。
「センセ…」
カカシは四代目の首に腕を廻し、抱き付いた。ただ、それ以上の言葉は出て来なかった。恥ずかしくて言えなかったのだが。
すると、四代目は大きなため息をついて言った。
「カカシ…そういう時は好き≠チて言葉を添えるものだよ」
「…す…好き…」
小さな声で、しかし、耳元で囁く言葉は心にも身体にも沁みてきて…。
「んー、カカシも、もっと好きって言えるようになると、いいんだけどね…」
「う……」
「それに、人前でも、オレみたいにガバッと抱き付いて欲しいなぁ」
「絶対ムリ!」
「そんな頭っから拒絶しないでよ」
「人前で抱き付けるのって、センセくらいです。オレは絶対出来ません」
「カカシ、やりもしないで出来ないって決め付けるのはよくないよ」
「オレはそんな恥ずかしいコトやりたくないの!」
「…ふ〜ん…」
四代目の目が座り、ひたとカカシを見つめる。真顔になった四代目に見つめられ、背中に嫌な汗が流れる。
やがて、ニッと笑ったかと思うと、
「分かった。だったらオレは、カカシの分もカカシに抱き付くね」
それだけは、勘弁して欲しいと願うカカシであった。
強制終了?
07.09.14
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