キス 2
2P/2P



「センセ、どう?」

「ん、気持ちいいよ〜。このまま寝ちゃいそう」
「ホントに寝ないでくださいよ?」
「やだなぁ、カカシ君じゃあるまいし。寝ないよ〜」


「…いつの話だよ…」


確かに小さい頃、お風呂で寝てしまったことがある。
言い訳するわけじゃないけど、その時のオレは疲れてて、髪を洗ってくれるセンセの手が気持ち良くてつい…。


「ふふ…懐かしいね〜」


そんな事言うもんだから恥かしくなって、シャワーのコックを全開にして掛けてやった。ちょっと慌てたセンセが可愛かったから、許してあげることにした。




着替えを用意していなかったオレ達は、裸で寝室に戻ることになる。
いくら家の中で誰も見てる人がいないとはいえ、素っ裸で歩くのはかなり恥ずかしい。
せめて腰にタオルを巻きたかったけど、すぐ寝るんだからと、素っ裸のまま戻ったんだ。センセは恥かしくないのかな? 堂々としてるけど。オレはやっぱり恥ずかしくて、前をちょっと隠してたら、「んなことすると、よけい恥ずかしいんだよ?」と笑われた。

でも、仕方ないでしょ。オレはセンセみたいに達観出来ないんだから。



ベッドへ潜り込めば、シーツの冷たさがほてった身体に心地良かった。裸ってのがちょっと落ち着かなかったけど。


直ぐさまセンセはオレを抱き締めてきて、
「ああ、カカシだ〜」
と、嬉しそうに言った。


抱き締められた時、お互いに緩く勃ちあがったモノが触れて思わず身体が強張ってしまった。
センセとセックスするのが嫌とかじゃなくて、自分が少し欲情していることを知られたのが物凄く恥ずかしかったんだ。


「あ〜、大丈夫だよ、そんなに緊張しなくても。今夜は何もしないって」
「え?…あ、うん…」


そんな事言われて、顔が火がついたように赤くなるのが分かった。センセに触れられれば、抱いて欲しいと思う浅ましいオレ。
だけど、やっぱりそれは恥ずかしいというか、何と言うか…。照れちゃうのもあるし。
そんなオレの気持ちまでセンセにバレちゃって、やっぱりセンセにはかなわない…。


「今夜は安眠できそうだよ」


オレの気持ちを知ってか知らずか、そんな事を呟いたセンセ。

「安眠?」
「ん。オレね、何故か昔からカカシが傍にいてくれると熟睡できるんだよね。だから、今夜はこうしてて…」

センセに抱き締められて、トクトクといつもより少しだけ早い鼓動を聞いているうちに、トロリと瞼が重くなってくる。


「おやすみ」


センセの声を遠くに聞きながら、いつしか夢の中へと落ちていった。








小鳥の囀りに促されて夢の扉を押し開く。


と、目に映るのはうっすらと口を開け、柔らかい寝息をたてているセンセの寝顔。
カーテン越しの柔らかな朝日の中で、センセの寝顔を見るのは初めてかもしれない。

こうして寝ているセンセの顔は幼く見える。本人は童顔を気にしてるから言わないけどね。


今、オレの心を射抜くように見つめる瞳は閉じられていてオレを映してはくれないし、愛を囁く唇は薄く開かれてはいるものの、オレの名を呼んではくれない。



『…キスは?…』



不意に夕べのセンセの言葉が甦る。

ドキンと心臓が跳ねた。

オレがキスするのを待ってたと言ったセンセ。今も待っているのだろうか?
どうしよう…。キスした方がいいのかな?
しちゃっていいのかな?
起きちゃわないかな。
もし、キスした瞬間、センセと目が会っちゃったら、どんな顔したらいいんだろう?


そんな事を考えていたら心臓がバクバクといっちゃって、内心オタオタとしてたのが知らず身体まで強張ってきてしまう。
そしたら、センセが口端をキュッと上げて肩を震わせ始めた。


「…何がおかしいの…」


やっぱり起きてたんだと焦りつつ、笑いを堪えてるセンセにちょっとムッとした。だから、センセに掛ける声もちょっと低くなっている。


「ごっ…ごめ…」


謝りながらも、センセは笑いを必死で堪えている。

人間、あんまり笑われると腹立つもので、ペチッと軽くセンセの頬を叩いてベッドから出ていこうとした。
でも、出ていこうとしただけで、センセにすぐ掴まって阻止されたけど。


「ごめん、ごめん。悪かったよ。カカシがあんまり躊躇っているからさ…」

クスクス笑いながらセンセは言った。

「そういう時はね、あんまり考えないでサッとしてしまうんだよ。こんな風に」


そう言って軽く唇が触れ合った。


「おはよう、カカシ」

「…おはようございます…」



センセはにこやかに笑ってたけど、オレは凄くバツが悪い。


「あの…叩いちゃって、ごめん…」

「どう致しまして」



センセは笑って許してくれて、いつまで経ってもセンセには敵わないなぁと思う。

だから……。


「…好き…だよ…」



恥ずかしいから小さな声しか出なかったけど、そう告げてセンセの唇にそっと口付けた。

そしたらセンセは「やられた」と言って、艶かに笑った。








end.
08.05.14




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