花 2
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サクリ、サクリとカカシは大地を掘っていく。傍らには小さな白い花。
カカシの回りには、その小さな花が咲きみだれていた。

















カカシの父、はたけサクモが亡くなって一年が経とうとしていた。

サクモの亡骸は、埋葬を拒否されたまま骨壺に納められ自宅にぽつんと置かれていた。


サクモが亡くなってから、カカシから笑顔が消えた。
大好きな父親が死んでヘラヘラ笑ってなんかいられる訳がないが、一年経った今でも笑顔は戻らない。


カカシの心の傷はそれ程に深いのだ。

仲間を助ける為、任務を放棄。里人や仲間から中傷され、自害したサクモ。
そんなサクモの息子であるカカシにも、里の中傷や嫌がらせは向けられた。

咎人の子と蔑まれることも度々だ。


そんなだから、49日を終えても埋葬を拒否され、かつてサクモが使っていた机の上に置かれた。


埋葬の拒否をした者は、カカシにかなりの暴言を吐いたようだ。
骨壺を抱き抱え、真っ青な顔をして戻ってきたから。


カカシは無表情のまま、しかし、師とは目を合わせようとはせず、ただ淡々と拒否されたことを報告した。


カカシは自宅に戻ると骨壺を抱えたまま座り込み、虚ろに宙を見ていた。

泣くことを忘れたカカシ。
嫌がらせを受けても、ひたすら耐えているカカシ。


泣いたっていいのに、怒ったって当たり前なのに、感情を殺して…。
その強さはどこから来るのだろう?
その小さな身体で、何を受け止めようというのか。



「カカシ。一緒に帰ろう。オレと一緒に暮らそう。ずっとお前の傍にいるから。約束する」

いたたまれなくなって、カカシを連れて帰った。

一緒に持って帰ってもいいよ、と言ってもカカシは首を横に振った。


「父さんの家は…此処だから…」


本当は《オレの家は》と言いたかったのかもしれない。

だが、あえてカカシは父さん″と言った。
オレが一緒に暮らそうと言ったからだろうか?

この利発な子は、既に諦めることを覚えたということなのだろうか…。


なんとかしたいと、してあげたいと思う。

オレに何が出来るだろう?
でも、出来る限り守ってあげるから。
そう思いながら、カカシの手を引いて帰って行った。




──あれから一年。

一緒に暮らし始めはしたが、笑顔は戻ってきてはいない。
元々無愛想な方だが、それでも笑ってはいたのだ。
笑顔を取り戻すには、まだ時間が掛かりそうだった。



カカシは、たまに家へ帰り、掃除などしているようだ。
ようだ、というのは、オレが任務で里にいない時を見計らって行っているらしい。

先日、奈良からカカシが自宅方向へ行くのを見掛けたと聞いた。
奈良も最後までつけた訳じゃないが、あの方向にはカカシの家しかない。

やはり、気になるのだろう。それは仕方のないことだ。

ただ、そうすることでカカシの心が落ち着くのなら、かまわないと思った。


もう、昔のような屈託のない笑顔を見ることは叶わないだろうけど、それでも少しでも取り戻してやりたい。





そんな想いでいた矢先であった。





カカシの家が火事になった。

──放火

誰も住んでいない家だ。時々カカシが帰っているとはいえ、料理まではしない。

誰かが火を放ったのだ。怨恨か…遊びか、または憂さ晴らしか。

怨恨の線は薄いように思えた。サクモさんが亡くなって一年ちょっと。そこまで恨まれる人ではなかったし。

すると、遊びか憂さ晴らしが濃厚になる。
多分、里の方もそんなに本腰を入れて捜査はしないだろうから、きっと犯人は捕まらないだろう。



炎は物凄い勢いで、あっという間に全てを飲み込んだ。

駆け付けた者が消火活動をしたが、そこが、亡きはたけサクモの家と分かると、消火が鈍った。

皆、関わり合いにはなりたくないとでも思ったのだろうか?

そんな所へカカシが駆け付けた。


カカシは皆のそんな様子を見て、どう思ったろう?
思い出の詰まった我が家が燃えるのを見て、何を感じたろう?



カカシは、ただ黙って見ていた。
その幼い顔には、何の感情も見て取れなかった。



オレはそれを見て、凄く焦った。カカシにこれ以上、燃え盛る我が家を見せたくなかった。


「カカシ、帰るよ」


言うが早いか、カカシを抱え上げ、自宅へと跳んでいた。





口数の少ないカカシは益々無口になっていく。
そうして、どんどん一人で抱え込んで…

ねえ、一人で抱えきれるの?
どうして、オレに何も言ってくれないの?
オレは、そんなに頼りにならない?



小さくため息をついた。








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